2015 Fiscal Year Research-status Report
学習による脳可塑的変化を解明する神経細胞構造MRIの開発
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15K19829
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Research Institution | Okinawa Institute of Science and Technology Graduate University |
Principal Investigator |
笠原 和美 (疋島和美) 沖縄科学技術大学院大学, 神経計算ユニット, 研究員 (30706164)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | MRI / 可塑性 / 拡散スペクトラムイメージング / Diffusion tensor imaging / 白質微細構造 / 軸索 / 髄鞘 |
Outline of Annual Research Achievements |
リハビリテーションなどの長期的な訓練によって、脳機能が回復すると共に脳白質の異方性が高くなることが知られている。しかし、脳機能の回復効果や構造変化には個人差があり、十分な効果が得られない場合が存在する。加えて、これらの個人差が脳のどのような現象に起因しているのか、生物学的な機序は明らかでない。誰もが訓練に応じた効果を得られるためには、リハビリテーションによって、「何が」「どのように」変化していくのか、その個人差を明らかにする必要があると考えた。そこで、本研究では脳白質の構造変化に着目し、脳白質の微細な構造変化を評価できる「神経細胞構造MRI」の開発を目的として研究を開始した。 神経細胞の微細構造には拡散現象が寄与するため、Diffusion Tensor Imaging(DTI;拡散テンソルイメージング)を用いた解析が一般的に実施されている。一方、DTIは、ボクセル内の拡散分布をガウスモデルに近似するため、軸索や髄鞘などの白質微細構造を判別できない。そのため本研究では、軸索や髄鞘など微細構造を反映するDiffusion Spectrum Imaging (DSI;拡散スペクトラムイメージング)の撮像シーケンスを所属機関の動物用MRIに導入した。前所属機関の臨床用3T MRI装置で構築したDSIシーケンスを、所属機関の実験動物セクションのサポートを受けながら、動物用11.7T MRI装置に移行し完成させた。また、同セクションのサポートによって、DSIデータから神経軸索内径および髄鞘密度を推定する解析方法も習得した。さらに、動物用MRIでの研究と並行して、臨床用MRIを用いてブレイン・マシン・インターフェイスの操作の個人差に関わる脳部位を同定した。この成果は、神経科学学会で発表し、国際誌に掲載された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、臨床用MRIで実施した個人差に関する研究が国際誌に採択され、動物用MRIにおいても撮像シーケンスが完成した。次年度は、開発した手法を生物学的に裏付けるために、MRI計測と並行して免疫組織染色を行う。また、出産によって半年間の産休を取得し研究を中断したが、当初の計画に沿っておおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は当初の予定通り、実験的リハビリテーションとしてマウスの運動学習を行う。運動学習前後のDSI計測によって、行動成績の向上に伴う脳白質微細構造変化を明らかにする。さらに、将来的な臨床応用に向け、人を対象としたリハビリテーションの個人差を明らかにする研究も並行して実施する。
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Causes of Carryover |
マウス用運動学習装置一式は、別の申請課題と共通のものを使用することにしたため、購入の必要が無かった。さらに、出産に伴う半年間の産休のため、旅費等を使用しなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
マウスの馴化のために馴化アプリケーター(疑似学習装置)を追加で購入する。また、研究を円滑に進めるため、マウスの運動学習を担当するパートタイム実験補助員を雇用する。そのため、今年度の未使用分は、次年度以降に物品費と人件費として使用する。
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Research Products
(2 results)