2015 Fiscal Year Research-status Report
肝移植後拒絶反応における類洞血管外血小板凝集関与の解明と新規治療の開発
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15K19844
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
中沼 伸一 金沢大学, 大学病院, 医員 (00640921)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 肝移植 / 血小板凝集 / グラフト不全 / 拒絶反応 |
Outline of Annual Research Achievements |
生体肝移植の治療成績は向上を認めるが、1 年以内に10~20%の死亡例を認め、術後早期の生存率の改善が急務である。特に拒絶反応に関して、免疫抑制剤の増量や変更にても治療に難渋することがあり、更なる病態追及と新たな治療戦略が必要である。我々は、肝移植後早期に継続する血小板減少を認める症例の治療成績は不良であることに着目している。本研究では、肝移植後拒絶反応において肝組織での血小板凝集・活性化の病態や役割を解明し、その抑制による影響を検討することを目的としている。 生体肝移植後早期に肝生検により得られた20症例の肝組織において、血小板は主に類洞血管外血小板凝集Extravasated platelets aggregation(EPA)の形態として認められた。EPAの発症には、類洞血管内障害が関連していると考えている。EPAは主に小葉中心静脈周囲(Zone3)に存在し、EPAの程度が強い症例ほど、術後の血小板数低下や肝機能低下を認め、1年生存率も低下することを確認した。EPAが、慢性拒絶を含めたグラフト機能不全に関与している所見と考えられ、本研究による実験的な証明の必要性を示す結果と考えられた。 肺移植では,炎症に起因して局所に出現するDe novo lymphoid tissueが2次リンパ装置としての役割を担い,拒絶に関与することが報告されており、肝移植でも同様の現象が起こっている可能性がある。肝移植後早期に発症する類洞血管内皮障害およびEPA伴う炎症がDCの成熟化を誘導し、De novo lymphoid tissueを介して拒絶反応に関与している可能性を推測しており、本研究にて同病態の有無を解明したい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
ラット肝移植拒絶モデルの樹立が遅れており、肝移植拒絶反応における血小板凝集・活性化の程度や影響の解明がまだ開始できていない。モデルの樹立に関しては、本年度では環境および手術器具の整備を進め、同時にモデル樹立者の指導も受けており、次年度には樹立できると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度ではモデルを早期に樹立し、当初の計画通りに実験を進めたい。また、先述の結果より、EPAの抑制に効果的な薬剤としては、抗血小板作用および血管内皮保護作用を持つ、PDE3阻害剤が有用と考えられ、モデル樹立後には同薬剤による拒絶反応およびグラフト機能低下の軽減効果を検討していきたい。
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Causes of Carryover |
ラット肝移植拒絶モデルを樹立できなかったので、検体を用いた実験ができず、予定していた実験試薬の購入がなかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度には、早期にモデルを樹立し、当初の計画通りに実験を進める予定である。
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