2015 Fiscal Year Research-status Report
未固定遺体を用いて乳癌術後リンパ浮腫の原理及びセンチネルリンパ節の機能を解明する
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15K19856
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
中川 美砂子 徳島大学, 大学病院, 助教 (20522270)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | CTリンパ管造影 / リンパ浮腫 / センチネルリンパ節生検 |
Outline of Annual Research Achievements |
乳房-腋窩-上腕のリンパ網の解明ならびに病理組織学的センチネルリンパ節転移陽性症例におけるセンチネルリンパ節とバックアップ腋窩リンパ節郭清によるリンパ節のマッピングを行った。Tis-T2の原発性乳癌患者228例について、CTリンパ管造影を用いて乳房から腋窩リンパ節に至るリンパ管ならびにセンチネルリンパ節の画像所見について解析した。センチネルリンパ節転移陽性所見として、 A.センチネルリンパ節のPartial staining, B.Stagment lymph vessels, C.Dilated lymph vessels, D. Detoured lymph vesselsの4つのパターンに着目した。うち27例に腋窩リンパ節転移が認められ、Accuracy 89.0%, Sensitivity 92.5%, Specificity 88.6%, Positive predictive value 52.1%, Negative predictive value 98.8%であった。CTリンパ管造影により術前に腋窩リンパ節転移陽性と診断し得た症例は25例あり、2mm未満の微小転移の1例とレトロスペクティブにパターンD. Detoured lymph vesselsにより真のセンチネルリンパ節が同定できていなかった1例であった。今後さらなる正診率の改善が必要であるが、腋窩リンパ節のネットワークを術前に同定することにより、腋窩リンパ節転移陰性の乳癌患者に対する安全かつ正確なリンパ節生検が可能であること、さらには不要なセンチネルリンパ節生検の回避の可能性が示唆された(Breast Cancer.23:519-524,2016, Misako Nakagawa et al.)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでに術前診断Tis-T2の原発性乳癌患者について、病理学的にセンチネルリンパ節転移陽性症例におけるセンチネルリンパ節の同定とバックアップ郭清された腋窩リンパ節のマッピングを行い、同定されたセンチネルリンパ節に転移が存在してもそれより下流のリンパ節には転移が認められておらず、センチネルリンパ節により腫瘍細胞が捕捉され、それより下流のリンパ節転移を阻止していることを明らかにした。クリニカルアナトミーラボを利用した未固定遺体を用いたCTリンパ管造影の手技を確立するため、水溶性造影剤を組織内に注入し、十分なマッサージを行いながら、経時的にCT検査を行い、リンパ管を観察した。生体におけるCTリンパ管造影手技と同様の手法では、もともと脆弱な壁構造を持つリンパ管の内腔を注入したトレーサーにより描出することは困難であり、未固定遺体におけるリンパ管ならびにリンパ節の描出手技の改善が必要であるという結果を得た。
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Strategy for Future Research Activity |
乳癌患者での臨床データをもとに、今後は、未固定遺体を用いて、乳房-腋窩-上腕のリンパ網の解析を行う予定である。まず、未固定遺体におけるリンパ管描出の改善策として、これまでの未固定遺体を用いたリンパ構造の研究報告を考慮し、未固定遺体の解凍条件の最適化、リンパ流を観察するため静脈還流、リンパ管へのカニュレーションによるリンパ管造影手技の確立を図る。リンパ管造影手技が確立されれば、腋窩リンパ節郭清が上腕からのリンパ流に与える影響についてCTリンパ管造影を用いることにより、さらに詳細な3Dでの乳房-腋窩-上腕のリンパ網の観察を行う。これにより、腋窩リンパ節郭清が及ぼす腋窩リンパ流への影響を解明する。今後、研究費は、トレーサー観察機器の購入、クリニカル・アナトミーラボの使用料、さらに得られた成果を学会に報告し、論文掲載するために使用予定である。
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Causes of Carryover |
購入予定であった機器が、その他周辺機器と合わせた際の購入金額が予算を超えており、購入が困難だったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
トレーサー観察機器の購入、クリニカル・アナトミーラボの使用料、さらに得られた成果を学会に報告し、論文掲載するために使用予定である。
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