2016 Fiscal Year Research-status Report
創薬研究基盤の確立を目指した新規立体培養法によるiPS細胞由来肝組織の創出
Project/Area Number |
15K19863
|
Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
高木 知聡 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 助教 (10626708)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | iPS細胞由来肝細胞 / 間葉系幹細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度では、製品化されたiPS由来肝前駆細胞を用いてiPS由来肝細胞に成熟化する過程において、間葉系幹細胞が分泌したタンパク質を含有した調整培地を用いることによって、より成熟した肝機能を有した細胞の作成に寄与した可能性を示すことができた。しかしながら、この知見を支持するためにはさらなる検証を重ねる必要があると考えられた。そのため、当初予定していた脱細胞化肝を用いた3次元培養下での機能的肝細胞の分化誘導法の研究を延期し、予定を変更して次の実験を追加した。①調整培地によって、分泌されるアルブミン、尿素量の増加、CYP活性の上昇を認めていたが、培養されている細胞数自体に差が生じていないか検証を行なう必要があった。具体的には、肉眼的な成熟細胞数の評価と、MTT試験を用いた評価を行い、調整培地で成熟化を行なった場合においても細胞数自体の増減が認めなかった。よって、調整培地は細胞数の数自体を増加させるわけではなく、細胞の機能もしくは分化効率に寄与している可能性が示された。②成熟肝細胞を購入、培養の上、成熟肝細胞のアルブミン産生量、CYP活性を測定してポジティブコントロールとして比較を行なった。調整培地を用いたiPS由来肝細胞は標準的な方法で作成した細胞と比較し機能的には向上していたものの、成熟肝細胞と比較するとアルブミン産生量やCYP活性では劣っていることが示された。③調整培地がiPS細胞由来肝細胞の成熟化に働く因子を同定するために、特定のタンパク質の含有量を測定した結果、肝細胞の分化誘導に用いられるBMP4の量が多く含まれていることが示された。以上の内容までを論文として作成し科学雑誌に掲載された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の実験内容とは異なっているものの、より適切な実験を模索した結果、仮説して挙げた間葉系幹細胞が分泌する因子がiPS細胞から肝細胞への分化誘導に寄与することが示された。さらに、さらなる検証を重ねることと、間葉系幹細胞が肝細胞の成熟化に寄与する機構の一端を明らかにするために、今年度は実験を追加した。当初脱細胞化肝を用いた3次元培養下での機能的肝細胞の分化誘導法の確立を計画していたが、今年度の実験を行なうことで、より明確に間葉系幹細胞の肝分化誘導への寄与を証明することができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
もともと予定していた、下記実験を計画する。 ①生体由来細胞外マトリックス骨格の作成:分化誘導の全工程、もしくは一部を脱細胞化骨格内で行ない、生体由来細胞外マトリックスが成熟肝細胞への分化誘導にどのように寄与するか評価する。脱細胞化肝臓は以下のごとく定型化した工程で作成する。ラットより摘出した肝臓にトリプシンを還流させ細胞融解を起こし、さらに界面活性剤を還流させることで細胞を洗い流し脱細胞化を完了させる。 ②均一な質を持った再細胞化肝組織様構造の作製:脱細胞化骨格内に、iPS由来肝細胞様細胞を経門脈的に充填した後、培養液を門脈経由で持続的に還流することで循環培養を行なう。脱細胞化臓器骨格によって生体近似環境下での3次元培養を可能にすると考える。正常肝組織と比較して種々の代謝酵素発現・肝細胞機能解析を行い、肝組織としての成熟度を評価する。 ③iPS由来肝細胞由来の肝組織様構造を用いた薬剤代謝活性の評価 3次元培養によって作製された肝組織様構造を用いて経門脈的な循環培養を維持し、薬剤代謝活性、薬剤毒性の評価を行なう。コントロールとして、正常肝組織および薬剤暴露前の肝組織様構造からの一部組織を用いた細胞密度の測定、リアルタイムPCRによる定量的な薬物代謝関連遺伝子発現の評価を行う。次に、薬剤添加培地による数日間の培養の後に、培地に含まれる薬剤の代謝濃度の変化、死細胞の評価、CYP活性の評価を行なう。
|
Causes of Carryover |
平成28年度に、ラットから脱細胞化骨格の作成と脱細胞化骨格内でのiPS由来肝細胞の培養を計画していた。しかし、研究過程で、間葉系幹細胞が肝細胞への分化誘導に寄与する可能性があるという新しい知見がえられたものの、その知見をより確かなものにするために追加実験をする必要性が生じた。また、間葉幹細胞が肝細胞への分化誘導に寄与するメカニズムの一端を明らかにするために、調整培地と標準的な培地でどのような違いがみられているかを明らかにすることが今後の実験に有益であること考えた。実験を追加し検証することで科学雑誌に論文を投稿し掲載されたが、予想外の日数を要したため、年度内に予定の計画を完了することが困難となり未使用額が生じた。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
予定していた、ラットから脱細胞化骨格の作成と脱細胞化骨格内でのiPS由来肝細胞の培養、さらに薬剤代謝活性の測定を予定する。脱細胞骨格内でのiPS由来肝細胞の培養は、通常の細胞培養と比較し多くの細胞の確保が必要となるために未使用額を繰り越しての実験を計画する。
|
Research Products
(1 results)
-
[Journal Article] Mesenchymal Stem Cells Contribute to Hepatic Maturation of Human Induced Pluripotent Stem Cells Chisato2017
Author(s)
Chisato Takagi, Hiroshi Yagi, Makiko Hieda, Kazuki Tajima, Taizo Hibi, Yuta Abe, Minoru Kitago, Masahiro Shinoda, Osamu Itano, Yuko Kitagawa
-
Journal Title
European Surgical Research
Volume: 58
Pages: 27, 39
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research / Acknowledgement Compliant