2015 Fiscal Year Research-status Report
ヒト腸管におけるPathogenicTh17細胞を誘導する自然免疫担当細胞の解析
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15K19885
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
松野 裕旨 大阪大学, 医学部附属病院, 医員 (30749750)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ヒト腸管粘膜固有層 / MDR1陽性Pathogenic Th17細胞 / 自然免疫担当細胞 / 炎症性腸疾患 |
Outline of Annual Research Achievements |
PathogenicTh17細胞に特異的に発現しているMDR1に着目して研究を進めている。 MDR1を発現している細胞を同定する方法としてRh123 assayを用いた。はじめにRh123 assayの条件検討を施行した。健常人の末梢血10mlからFicollを用いて末梢血単核球細胞を採取し、Rh123を細胞内へ取り込ませた後に37度 CO2 incubatorに静置する時間を検討した。1時間、2時間、3時間で検討し、静置時間は2時間に決定した。 次に正常腸管でのPathogenicTh17細胞を誘導する自然免疫担当細胞の同定の実験に移った。腸管粘膜固有層の自然免疫担当細胞の4つのサブセットの細胞(CD14-CD11clow,CD14-CD11chigh,CD14+CD163low,CD14+CD163high)を採取した。末梢血から単核球細胞を採取した後、Rh123 assayを施行し、MDR1陰性エフェクターT細胞を採取した。4つのサブセットの細胞とエフェクターT細胞を3日間共培養し、共培養後の細胞をRh123 assayすることによりMDR1陽性PathogenicTh17細胞の割合を測定した。コントロールとして末梢血中のCD14+単球を用いた。MDR1陽性細胞の割合は、コントロールの細胞に比べると4つのサブセットの細胞のいずれも有意差をもって高くMDR1陽性細胞の誘導能を認めたが、4つのサブセットの細胞間では有意差を認めず、いずれの細胞も同程度の誘導能であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究では、PathogenicTh17細胞を誘導する自然免疫担当細胞を同定し、その誘導メカニズムを明らかにすることにより、炎症性腸疾患の治療開発に貢献することを目的としている。 研究実績の概要に示した通り、ヒト腸管粘膜固有層の4つのサブセットの自然免疫担当細胞のMDR1陽性PathogenicTh17細胞の誘導能を見たところ誘導能は同程度であり、MDR1陽性細胞を有意に誘導する能力をもつ細胞を同定することはできなかった。ただし、コントロールの末梢血中の単球に比較すると、有意差をもって誘導能が高くなるため、腸管で刺激を受けた自然免疫担当細胞はMDR1誘導能を獲得すると考えられた。いくつかの条件で実験を進めていたため、研究進捗に遅れが出た。最終的には共培養にMDR1陰性エフェクターT細胞を使用したが、NaiveT細胞やエフェクターT細胞でも検討を施行した。また、共培養の方法に関しても、日数や培養液の検討などで時間がかかった。 今後は、クローン病や潰瘍性大腸炎患者の炎症部・非炎症部腸管を用いて、正常腸管と同様の手順でMDR1誘導能がある自然免疫担当細胞を同定する予定である。ただし、炎症性腸疾患患者の腸管サンプルは、検体採取の機会が非常に限られているため、研究の進捗に影響を与えるものと考えられる。 正常腸管においてMDR1陽性PathogenicTh17細胞を有意に誘導する能力をもつ細胞を同定するために様々な条件で検討を繰り返したことが、研究の進捗に最も影響を与えたと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は炎症性腸疾患患者の炎症部・非炎症部腸管を用いて、MDR1誘導能がある自然免疫担当細胞を同定する予定である。炎症性腸疾患患者でもMDR1誘導能がある自然免疫担当細胞が同定できなかった場合には、研究実施計画を見直し、MDR1陽性細胞の機能解析とMDR1陽性細胞を誘導するメカニズムを中心に検討することを考えている。 MDR1陽性細胞の機能解析に関しては、①正常腸管とIBD患者腸管に存在するMDR1陽性CD4陽性T細胞の割合の検討、②MDR1陽性CD4陽性T細胞とMDR1陰性CD4陽性T細胞でのサイトカイン産生の比較、③Apoptosis assayなどを検討している。具体的には、①はじめに腸管からT細胞を採取する方法の検討が必要である。自然免疫担当細胞を採取する方法では、CD4陽性T細胞を採取できないため、酵素処理の方法の変更等の検討をする必要がある。②MDR1陽性CD4陽性T細胞とMDR1陰性CD4陽性T細胞を採取し、mRNAを抽出してcDNAライブラリを作成する。qRT-PCRによりこれらの細胞の炎症性サイトカインや抗炎症性サイトカインなどのmRNA発現を解析する。③MDR1は細胞膜上に存在して細胞毒性を有する化合物などの細胞外排出を行う膜輸送蛋白であるため、MDR1陽性CD4陽性T細胞はMDR1陰性CD4陽性T細胞に比べて、アポトーシスに陥りにくい可能性があると考えられる。Apoptosis assayを用いて解析する。 MDR1陽性細胞を誘導するメカニズムに関しては、①TLR刺激/ATPを加えた時のMDR1陽性CD4陽性T細胞の誘導能の検討、②Transwell assayなどを検討している。
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Causes of Carryover |
PathogenicTh17細胞を誘導する自然免疫担当細胞を同定し、その誘導メカニズムを明らかにするための実験の物品を購入したため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
炎症性腸疾患患者の炎症部・非炎症部腸管を用いて、MDR1誘導能がある自然免疫担当細胞を同定するための物品を購入するため。
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