2015 Fiscal Year Research-status Report
胃切除術前後のグレリン産生細胞についての前向き追跡研究
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15K19887
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
新野 直樹 大阪大学, 医学部附属病院, 医員 (10724122)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | グレリン / 袖状胃切除 / リバウンド / 代償 |
Outline of Annual Research Achievements |
病的肥満症患者に対する袖状胃切除術の前後に胃体上部小弯部分から粘膜組織を採取し、RT-PCRにてグレリンmRNAの発現を比較したところ、平均値では術前後で有意な差を認められなかった(1:0.87)。しかしながら、術後7症例のうち術後5.9-6.9kgの体重リバウンドをきたしている3症例では、術後血中総グレリン値は術前の18-23%と低値を維持しているにも関わらず、術後体上部小彎部分のグレリン発現量については,術前平均の1.8-2.4倍高いグレリンmRNAの発現を認めた。一方で、グレリンmRNA発現と臨床背景(年齢、性別、ピロリ菌感染の有無など)や血液検査には有意な相関関係は認められなかった。 また、C57/BL6マウスに袖状胃切除術を施行し、術後30日間の通常飼育を行ったところ、約20%の体重減少を認めたものの、30日後にはほぼ術前と同レベルまでのリバウンドを認めた。血中活性化グレリン、非活性化グレリンの値に関しても、術後2日目に術前の約50%まで低下したが、7日目には術前レベルまで再上昇を認めた。グレリン産生臓器である胃、膵臓、十二指腸、視床下部、心臓を摘出し、術前後でグレリンmRNAと免疫組織染色でのグレリン産生細胞の数を比較したところ、胃小弯において、100倍1視野あたり1.5倍のグレリン産生細胞数の増加を認めた。しかしながら、膵臓、十二指腸、視床下部、心臓においては、グレリンmRNA、タンパクともに術前後で有意な差は確認できなかった。 以上のことから、袖状切除後残胃における代償性のグレリン産生の増加が、体重のリバウンドに寄与している可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究計画プロトコル(ヒト腹腔鏡下スリーブ状胃切除術(LSG)データ)が倫理委員会にて承認を得ることができ、予定通り症例集積を開始することができた。すべてのデータはまだそろっていないものの、患者同意は全員に得ることができ、サンプルは予定通りに集まっている。結果、ヒト臨床検体では、血中グレリン値が低値を維持しているにも関わらず体重リバウンドを来す症例の存在と、その背景にある残胃でのグレリンmRNA発現の増加を確認することができた。これは、残胃におけるグレリンの代償性産生増加が術後リバウンドに寄与するという仮説を裏付けるものであり、さらに、平成26年から開始し27年にかけて症例集積を行うことによって、同一症例における術前後の小彎グレリンmRNA発現状況比較も可能となってきており、今後より正確な評価が可能となると考える。 また、袖状胃切除術モデルマウスの作成にも成功。同モデルを用いることにより、ヒトで確認された残胃におけるグレリン産生の代償性増加をタンパクレベルでも証明すると共に、その他のグレリン産生臓器と言われる膵臓、十二指腸、視床下部、心臓においては、胃切除後でも代償性にグレリン産生が増加することはないことも確認できた。これらデータに関しては、ヒト臨床検体の解析を継続し、今後論文報告を行う予定である。 以上から、仮説をすべて証明するには、まだ不十分なデータではあるものの、進捗としてはおおむね順調と考え、達成度を上記と設定した。
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Strategy for Future Research Activity |
現在のところ、臨床検体およびモデルマウスを用いた研究ともに成果が出ており、倫理委員会の承認も受けている。研究推進の障壁はなく、引き続き予定通りに研究を進める。 具体的には、袖状胃切除術後リバウンド症例に対する追加治療の検討を行う。グレリン産生を増加すると報告されているVasopressinやOxytocin、Dopaminなどの阻害剤を投与することで、非投与群と比較し、術後食事摂取や体重、およびグレリンの代償性産生増加にどのような影響が出るかをマウスモデルにて検討する。また、肥満関連合併症である糖尿病に対する治療効果の変化も検討するため、耐糖能評価およびインスリン、GLP-1など各種ホルモンの測定も行い、両群で比較を行う。 今後の研究費においても、予定通りの支出となる見込みである。
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Research Products
(4 results)