2015 Fiscal Year Research-status Report
Wnt/βcateninシグナルを制御する新規核酸創薬の開発
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15K19890
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
菅生 貴仁 大阪大学, 医学部附属病院, 医員 (10745425)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 大腸癌 / 核酸医薬 / WNT/β-catシグナル / ドラッグデリバリーシステム |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、大腸癌におけるWNT/β-catシグナルの定量法を確立することに主眼を置き、なおかつWNT/β-catシグナルの制御機構の新たなメカニズムを新たに見出した。 Leucine-rich repeat-containing G-protein coupled receptor 5 (Lgr5)は細胞膜表面に存在する膜タンパク質であり、近年その受容体としての働きが同定され、そのリガンドがR-spondin 1であることが特定された (Win de Lau, et al. Nature 2011)。すなわち、Lgr5にR-spondin1が結合することにより、共役受容体であるFrizzled 7の活性化ともに、LRP6がリン酸化されることで、下流のWNT/β-catシグナルが活性化される。我々はそれらのカスケードの中でLgr5に特に着目し、さらには、新規のスプライスバリアントが存在することを発見した。それぞれのスプライスバリアントごとに下流のWNT/β-catが異なる (Osawa et al. British Journal of Cancer)。またLgr5のスプラシングにRNA結合分子であるPTBP1が関与することを発見した (未発表データ)。これらプロジェクトの中でWNT/β-catシグナルの活性化の検出方法の確立を行ってきた。また同時に動物実験においては、我々独自のドラッグデリバリーステムである核酸含有炭酸アパタイトの静脈注射による抗腫瘍効果を確認している(H Takahashi et al. MCT 2015)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ヒトにおけるWNT/β-catシグナルの制御機構が予想以上に煩雑であることが理解された。すなわち前述の通り、WNT/β-catシグナルに関わる受容体の一つであるLgr5が翻訳後修飾である、選択的スプライシングを受けることにより下流分子への影響を及ぼす。これらを慎重に解析してきたために予想外に時間を要した。また、大腸癌においてはAPC遺伝子の変異おこっていることにより恒常的にWNT/β-catシグナルが活性化していることは周知の事実である。遺伝子変異を持った分子の上流において遺伝子操作を行うことが、生物学的にどのような意義があるのかについての解析を慎重に行う必要がある。これら解析に時間を要したために現在までの達成度としては、「③のやや遅れている」を選択した。 慎重に解析をおこなった結果として、正常細胞や大腸癌細胞におけるTOP-Flash活性のスシフェラーゼアッセイによる定量方法を習得、確立し、確認し得るデータの信憑性の同時評価として、WNT/β-catシグナルの下流の標的分子であるAxin2、MYC、CD44の遺伝子発現ならびにタンパク発現の相関を確認することができた。すなわち、評価法が確立したことになる。今後の課題として、KRASの下流シグナルとWNT/β-catシグナルのコラボレーションを司るmiRの同定や、WNT/β-catシグナル自身を抑制するmiRの同定を試み、これらmiRの核酸治療への応用の可能性を検討すべく、細胞実験、動物実験により、抗腫瘍効果、副作用の有無の確認、などについての解析を網羅的に行う。
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Strategy for Future Research Activity |
我々はすでにWNT/β-catシグナルの評価方法であるTOP-Flash活性のスシフェラーゼアッセイならびにAxin2, MYC, CD44などの遺伝子とタンパク定量による測定方法を確立し習得している。これらを用いることで、確実にヒト胎児腎細胞HEK293とヒト肺線維芽細胞MRC5に、β-catenin発現vectorを導入しβ-catenin過剰発現モデルを作成し、さらに強発現のバリデーションを行う。miRアレイを用いて導入前後のmiRNAの変化を比較し、変化率の大きいものを抽出する。抽出したmiRがAPC変異大腸癌細胞株 (LoVo, HT29) においてWnt/β-cateninシグナル分子を制御するかどうかを調べる。Wntシグナルが活性化すると、核内にβ-cateninが蓄積し、転写因子であるTcf/Lef と複合体を形成しTcf/Lef の転写活性を誘導する。シグナルを抑制するmiRを同定し、そのシグナル活性の低下率を評価する。シグナルを制御したmiRのうち、Wnt/β-cateninシグナル関連分子を標的とするmiRを選別する。Targetscanなどのsequence binding prediction programを用いてWnt/β-cateninシグナル関連分子の3´UTRやCDSにbindingする可能性のあるmicroRNAを抽出。miR導入前後でmRNA、タンパクを抽出しqPCR、ウエスタンブロッティングを用いて比較解析をする。また、Target分子のbinding siteをpmirGLO Dual-Luciferase miRNA Target Expression Vector (Promega)に導入し、そのLuciferase activityを評価することにより直接的な標的分子かどうかの検討を行う。
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Causes of Carryover |
ヒトにおけるWNT/β-catシグナルの制御機構が予想以上に煩雑であることを証明するための物品を購入したため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
Target分子のbinding siteをpmirGLO Dual-Luciferase miRNA Target Expression Vector (Promega)に導入し、そのLuciferase activityを評価することにより直接的な標的分子かどうかの検討するための物品を購入するため。
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Research Products
(5 results)