2015 Fiscal Year Research-status Report
血漿中のmiRNAを指標とした新規膵癌リンパ節転移診断法の開発
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15K19906
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Research Institution | Kyoto Prefectural University of Medicine |
Principal Investigator |
森村 玲 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (70448736)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 膵癌 / リンパ節転移 / マイクロRNA |
Outline of Annual Research Achievements |
膵癌は全世界の死因第4位であり、今後さらに増加していくものと考えられている。しかし、外科的切除できても5年生存率は20から30%であり、予後不良の癌である。手術のみでは根治が望めないため、現在では術前の化学療法、放射線療法を行うことで治療成績を向上させようと試みがある。特にすでにリンパ節転移を伴う膵癌に対しては術前加療の恩恵が高いと考えられる。しかしながら、膵癌術前のリンパ節転移の正診率は各種画像診断を用いてもまだ低い。術前にリンパ節転移を正確に診断できることは、治療方針決定のためには重要な要因である。 一方、癌を含む様々な疾患においてmicro RNA(miRNA, miR)が、その病態形成や調節に大きく関与する事が報告されており、細胞内のみならず細胞外にも安定な形で存在する事が知られてきた。申請者は、膵癌患者血漿中のmiR-18a, -221が癌の存在や病態評価のbiomarkerとして有用である事を示唆してきた。 本研究では、膵癌のリンパ節転移に関わる候補miRNAを同定し、さらに膵癌リンパ節転移の診断を可能にするbiomarkerの確立を目指してきた。平成27年度は、膵癌患者の手術時採取した術前血漿を用いて、miRNA microarrayによる解析を行う事で、リンパ節転移のない患者と比べリンパ節転移のある患者血漿内で増加するmiRNAを同定し、膵癌リンパ節転移の新たなbiomarker候補を抽出することが可能であった。今後は同定した候補miRNAマーカーに対して、RT-PCR法を用いて実際の患者血漿での比較を行い、従来の腫瘍マーカーや画像診断との対比からバイオマーカーとしての有用性を検討する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度は、切除後にリンパ節転移陽性または陰性と病理学的に診断のついた膵癌患者の術前血漿を用いて、total RNAの抽出を行った。その後、microarray解析を行いリンパ節転移がない患者と比べ血漿中で有意な差を認めるmiRNA(miRNA X)を候補マーカーとして選出した。膵癌患者のサンプルは、個人差などのvariationを考慮して、リンパ節転移ある症例とない症例それぞれ3サンプルで解析を行い、2サンプル以上での変化を有意とした。 さらに、転移のあるリンパ節部分のパラフィン包埋組織から、RNA抽出キット(Recover All Total Nucleic Acid Isolation Kit (Ambion)を用いてtotal RNAの抽出を行い、real-time RT-PCR法によりmiRNA Xの発現解析を行った。リンパ組織内で高発現されているmiRNA Xとその患者血漿中のmiRNA発現とが正の相関を示していることを確かめた。以上の経過であり、概ね順調に研究は進行していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度の研究計画は、実際の患者検体において、新たなbiomarkerの候補miRNA Xの発現量をRT-PCR法を用いて測定し、その有用性を評価する予定である。具体的には手術を施行したリンパ節転移があった膵癌患者とリンパ節転移がなかった膵癌患者の血漿中のmiRNA Xの発現量を比較し、miRNA Xの臨床的な有用性を評価する予定である。さらに、術前血漿内のmiRNA X発現量とリンパ節転移の個数、分布、予後等の相関を解析する予定としている。その結果を、学会や論文化し世界に発信していく。
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