2016 Fiscal Year Research-status Report
膵臓癌に対するIMiDsの癌抑制機構の解明および新規治療法の開発
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15K19911
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Research Institution | Jikei University School of Medicine |
Principal Investigator |
春木 孝一郎 東京慈恵会医科大学, 医学部, 助教 (60720894)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 免疫調節薬 / 膵癌 / 抗癌化学療法 / pomalidomide / gemcitabine / nab-paclitaxel |
Outline of Annual Research Achievements |
膵臓癌は日本において癌関連死の5位であり、最も予後不良な消化器癌の一つである。近年、非切除例に対するgemcitabine/nab-paclitaxel 療法 (GN療法)が従来療法と比較して生存期間が延長し注目されている。しかし、生存期間中央値は8.5ヶ月であり、依然として予後不良である。治療抵抗性の原因としては、抗癌剤誘導性のNF-kBの活性化があげられる。NF-kBは種々の癌細胞で増殖やアポトーシス抑制、抗癌剤耐性に働くという報告がある。そのため、NF-kBの活性化を抑制することは抗癌剤抵抗性を改善すると考えられる。一方、ポマリドミド(PMD)はサリドマイド誘導体の第二世代免疫調節薬であり、多発性骨髄腫においてアポトーシス誘導や血管新生抑制作用が報告されている。また、サリドマイドは消化器癌においてNF-kB活性化を抑制するはたらきがあることから、PMDも同様の作用が期待される。今回、我々は膵癌細胞に対してPMDとGNを併用し(GNP療法)、GNP群でGN群よりも抗腫瘍効果の増強作用、アポトーシス誘導作用、細胞増殖抑制効果を認めた。さらに、骨髄腫細胞に対しての効果と同様に、細胞周期停止効果、血管新生抑制作用を認めた。動物実験においては、マウスの異種同所性膵臓癌モデルを作成し、有意差をもってGNP群でGN群よりも腫瘍増殖抑制効果を認めた。 同時に我々は、現在膵臓癌に対して施行されているgemcitanine/S-1療法(GS療法)にPMDを併用(GSP療法)し、GNP療法と同様に抗癌剤抵抗性の改善、NF-kB活性化抑制、アポトーシス誘導作用を検討しGNP療法と同様の結果が得られた。 またNF-kB阻害薬としてのメシル酸ナファモスタット投与においてGSK3β活性が感受性に寄与し、Protein phosphatase 2Aがそれを調節する役割を果たしていることを証明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ヒト膵臓癌細胞株(MIAPaCa-2, PANC-1)を用いてPMD併用GN療法 (GNP療法)のNF-kB活性化抑制、細胞増殖抑制効果、アポトーシス誘導を各種アッセイで評価し対照群と比較した (in vitro)。 GNP群はGNによって活性化されたNF-kBを抑制した (p<0.01)。PMD併用により、IkBaの発現上昇を認め、IKKs依存性にNF-kB活性化を抑制していることが示唆された。さらに、PMD併用群で細胞増殖抑制効果を認め (p<0.01)、アポトーシス誘導作用も認めた (p<0.01)。また、アポトーシス関連タンパク (p53, Cleaved caspase-3, -8, Cleaved PARP)の発現上昇が観察された。in vivoにおける検討も行い (n=4)、治療開始後5週で有意差をもってGN群よりもGNP群で腫瘍増殖抑制効果を認めた (p<0.05)。in vivoにおいてマウスの体重減少を認めなかった。 細胞周期停止効果、そして血管新生抑制作用を確認したところ、PMD単剤投与によってコントロールと比較して有意差をもって増強効果を認めた (ともにp<0.01)。 メシル酸ナファモスタットの感受性規定に関しては、高感受性株(MIAPaCa-2)または低感受性(PANC-1)膵臓癌細胞株の比較で、MIAPaCa-2においてリン酸化GSK3βは強発現しており、GSK阻害剤投与で細胞増殖抑制効果およびCleaved caspase-8の増加を認めた。またProtein phosphatase 2Aによりリン酸化GSK3βは増加し、細胞増殖抑制効果およびCleaved caspase-8の増加を認めた。 これらの成果をアメリカ外科学会(ASC, ACS)、日本外科学会、日本消化器外科学会にて発表しており、現在論文化し世界に発信する準備を行なっている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後臨床応用する上で、議論されることになると考えられる副作用に関しての検討を中心に動物実験の追加実験を行う予定である。上述の実験において、n=4で体重の有意な変化を認めなかったが、PMDの副作用として報告されている骨髄抑制や血小板減少、そして凝固異常に関しての検討を追加で行う予定である。 また、GSP療法のin vivo における検討、そして同摘出腫瘍のELISA, Western blottingおよびそれらの実験を行う。
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Causes of Carryover |
次年度に繰り越す金額が生じた理由としては、平成28年度に予定していたが未施行となっているGSP療法のin vivo における検討、そして同摘出腫瘍のELISA, Western blottingおよびそれらの実験に用いるプラスチック製品などの消耗品購入のための予算が執行されていないことに起因する。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
すでに科研費の応募段階で平成29年度の物品購入費用を算出しているが、前年度からの繰越金んで購入する予定の物品は以下の通りである。(B)=1,755,606, (A)=1,590,634として、B-A=164,972となるが、この額で購入する製品は、約8万円のRT-PCR関連製品と、それに用いるプラスチック製品、そして副作用検討のためのin vivo 実験の追加実験に用いるマウス購入費に充てる予定である。
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Research Products
(5 results)