2015 Fiscal Year Research-status Report
大動脈瘤における免疫グロブリンの役割と免疫制御分子Sykに着目した治療法開発
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15K19928
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Research Institution | Kurume University |
Principal Investigator |
古荘 文 久留米大学, 医学部, 助教 (80597427)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 腹部大動脈瘤 / B細胞 / 免疫グロブリン / 炎症 / Syk |
Outline of Annual Research Achievements |
大動脈瘤は、慢性炎症による壁の脆弱化と拡張が進行し破裂を来す致死的疾患であるが、病態評価指標や内科的治療法は確立していない。通常の動脈硬化と比較して瘤組織ではBリンパ球(B細胞)浸潤および免疫グロブリンの著明な沈着が特徴的であるが、その意義は不明である。B細胞と免疫グロブリンは慢性炎症病態に深く関わる可能性が高く、その意義の解明は病態制御に直結すると期待される。申請者はこれまでの研究で、B 細胞が免疫グロブリンを介して瘤病態を悪化させることを発見した。本研究ではこの発見に基づき、免疫グロブリンの産生と炎症促進作用の双方に関わる免疫制御分子 Syk に着目し、大動脈瘤の炎症病態を解明する。マウス実験では、大動脈周囲に塩化カルシウムを塗布して炎症を惹起させ6週間で完成する大動脈瘤モデルを用いて検討した。野生型マウスと比較して先天性B細胞欠損マウス(μMTマウス)では炎症シグナルであるJNK, Syk, NFkBの活性化、ECM分解が抑制され、瘤形成が抑制された。また、μMTマウスでは、免疫グロブリン投与によりSyk, NFkBの活性化とMMP-9の発現が増加し、瘤形成が促進された。免疫グロブリンは炎症細胞表面の Fc 受容体に結合し、 Syk 活性化を介して炎症シグナルを伝達する。Syk は炎症 細胞特異的に発現する Src ファミリーチロシンキナーゼで あり、B 細胞の活性化にも必須の役割を果たす。これまでの検討で、B 細胞活性化と免疫グロブリンによる炎症促進にSykが関与し、瘤形成を制御することが強く示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定されている各実験は順調に進んでいるため。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、マウス大動脈瘤、ヒト大動脈瘤組織を用いて分子学的検討(DNAマイクロアレイ解析、タンパク解析など)を行う。
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Causes of Carryover |
初年度で十分な手技を確立し安定した結果が得られたため、実験回数が減り使用する試薬などの節約ができたからと考える。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度はより大規模な解析を予定しており、研究の更なる飛躍を目指す。
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Research Products
(1 results)