2016 Fiscal Year Research-status Report
HUVECワクチンの悪性脳腫瘍における免疫学的機序の解明と血管芽腫への適応拡大
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15K19950
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
高柳 俊作 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (90406489)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | HUVECワクチン / 血管芽腫 / 腫瘍血管新生 |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)ワクチンは、腫瘍血管新生を抑制することで、腫瘍増大抑制をすると考えられているが、その免疫学的機序は、不明瞭のままである。当院では、HUVECワクチンの臨床試験を行い、再発膠芽腫に対しては、一定の腫瘍増大抑制および予後改善を認めている事(Tanaka M, et al Cancer Sci 2013)を、世界で初めて報告した。平成27年度までは、臨床試験を継続し、対象患者さんから、ワクチン投与前後の血液、血清の収集を行い、今までに回収できた血清は、計30例近くとなった。これらの症例に対して、一部、HUVEC特異的な免疫が誘導されている事は確認されている。また、すべての対象症例に関しての臨床経過も把握しており、予後解析、上記の基礎的データとの統合、データベース化を行っている。 腫瘍血管新生が著明である血管芽腫に対しては、日本で初めて開設された当院VHL病専門外来(VHL病は、家族性腫瘍の1つで、血管芽腫が多発する疾患、研究代表者高柳が担当)や、摘出術症例を通して、本年度も、血管芽腫の腫瘍検体の収集を行い、さらに、その腫瘍DNAを用いて、網羅的遺伝子解析を行っている。その解析結果をまとめたものは、2016年のアメリカ脳腫瘍学会で報告し、『Neuro-oncology』誌(Takayanagi S,et al,2017)に掲載することができた。 これまでの解析結果をまとめると、臨床試験の対象症例では、HUVECワクチンの特異的免疫は、ほぼきちんと誘導されている可能性が高いが、腫瘍増大抑制効果がほとんどない症例群と、腫瘍増大抑制効果が著明な群と2つに分かれる可能性がある事が判明した。また、血管芽腫では、腫瘍化のために、VHL遺伝子の不活化が、改めて深く関与している可能性がある事が判明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当院では、平成27年度の途中まで、HUVECワクチンの臨床試験を行っていたが、ワクチン作成において、FBSを用いており、プリオン病対策が不十分という事で、中止を命じられ、いまだ、再開を許可されていない現状です。従って、本研究で用いられる検体数に関しては、これ以上伸びない状況である。臨床試験再開のために、FBSを用いないで、HUVECワクチンを作成する方法を考慮している最中であり、こちらにかなりの時間を費やしている状況である。 また、HUVEC特異的な免疫を誘導されているかを確認するために、従来から、ELISA法を使用しており、これに関しては、問題なく解析できていると言える。しかし、腫瘍増大抑制に対して、どのようなサイトカインネットワークが誘導されているのかを解明するため、今回新たにLuminex法を用いて、計測しているが、1検体あたりにかかる費用が高額であり、販売業者から指導をしてもらいながら、少しずつ、慎重に行っている状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
まずは、HUVECワクチンの臨床試験再開、臨床応用のために、HUVECワクチンの、FBSを用いない、作成方法を考案していく方針である。具体的には、ヒト血小板を用いて、作成する方法を考案中である。 また、本研究では、HUVECワクチンが有効な症例群と、無効な群がある事がわかり、それら2群で、HUVEC特異的免疫の誘導具合や、誘導されているサイトカインの違い、標的としている抗原の違いなどを解析し、HUVECワクチンの腫瘍増大抑制効果の免疫学的機序の解明を行っていく方針である。また、治療に有効な標的抗原候補を同定し、それが実際の腫瘍標本を用いて、発現しているかの確認を行う。 さらに、上記で述べたように、当院では、30例以上の血管芽腫の網羅的遺伝子解析のデータを保有しており、これらのデータと、HUVECワクチン使用症例のデータとの比較解析を行う事で、HUVECワクチンの血管芽腫への適応拡大の検討も行っていく。
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Causes of Carryover |
本研究は、HUVECワクチンの腫瘍増大抑制効果のメカニズムを、HUVECワクチンの臨床試験の対象症例の血液などを用いて検討する研究である。しかし、当院でのHUVECワクチン臨床試験は、前記したごとく、ワクチン作成におけるプリオン病対策が不十分という事で、科研費配布後に、一旦、中止を命じられている状況である。従って、当初の計画よりも、症例数が少なくなってしまっており、現在は、臨床試験再開するのに、時間を要している状況である。腫瘍増大抑制効果のメカニズム解明のためには、解析をさらに継続する必要があると考え、研究期間延長が必要と判断した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
まずは、HUVECワクチンの臨床試験再開のために、HUVECワクチンの、FBSを用いない、作成方法を考案していく方針である。具体的には、ヒト血小板を用いて、作成する方法を考案中である。 また、本研究では、HUVECワクチンが有効な症例群と、無効な群がある事がわかり、それら2群で、HUVEC特異的免疫の誘導具合や、誘導されているサイトカインの違い、標的としている抗原の違いなどを解析し、HUVECワクチンの腫瘍増大抑制効果の免疫学的機序の解明を行っていく方針である。さらに、当院では、30例以上の血管芽腫の網羅的遺伝子解析のデータを保有しており、これらのデータと、HUVECワクチン使用症例のデータとの比較解析を行う事で、HUVECワクチンの血管芽腫への適応拡大の検討も行っていく。
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Research Products
(11 results)
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[Journal Article] Differences in genetic and epigenetic alterations between von Hippel-Lindau disease-related and sporadic hemangioblastomas of the central nervous system.2017
Author(s)
Takayanagi Shunsaku, Mukasa Akitake, Tanaka Shota, Nomura Masashi, Omata Mayu, Yanagisawa Shunsuke, Yamamoto Shogo, Ichimura Koichi, Nakatomi Hirofumi, Ueki Keisuke, Aburatani Hiroyuki, Saito Nobuhito
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Journal Title
Neuro oncology
Volume: 印刷中
Pages: 1-7
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Acknowledgement Compliant
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[Presentation] Integrated genomic analysis for von Hippel-Lindau disease-related2016
Author(s)
Shunsaku Takayanagi, Akitake Mukasa, Masashi Nomura, Shunsuke Yanagisawa, Shota Tanaka,Hirofumi Nakatomi, Hiroyuki Aburatani, Koichi Ichimura, Keisuke Ueki, Nobuhito Saito.
Organizer
21st annual meeting of the society for neuro-oncology(SNO)
Place of Presentation
Scottsdale Arizona USA
Year and Date
2016-11-19 – 2016-11-19
Int'l Joint Research
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