2015 Fiscal Year Research-status Report
脳虚血時のP2X4受容体を介した血管内皮による虚血耐性獲得メカニズムの解析
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15K19965
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
尾崎 友彦 大阪大学, 医学部附属病院, 医員 (00723123)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | P2X4受容体 / 脳虚血耐性 / オステオポンチン |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は脳梗塞に対するP2X4受容体を介する虚血耐性獲得のメカニズムの研究を行い、その成果を学会で発表した。今年度の補助金はマウス、試薬、研究に必要な書籍の購入費に当てられた。 Vitro実験で、マウス脳血管内皮細胞(b.End3細胞)にshear stressをかけるとオステオポンチンが上昇し、P2X4受容体のsiRNAを投与するとその発現上昇が抑制されること、P2X4受容体の作動薬イベルメクチンを投与するとb.End3細胞と供培養した際のオステオポンチンの発現が上昇した。これによりP2X4受容体がオステオポンチン発現を促進させることを確認できた。 次にVivo実験で、血管内皮特異的にP2X4受容体をノックアウトさせたマウスを作成した。このマウスではP2X4受容体による血流感知が出来ず15分間の一過性中大脳動脈閉塞(Preconditioning)による虚血耐性を獲得することが出来ないことを明らかし、P2X4受容体が虚血耐性獲得に必要であることを明らかにした。 さらにVivo実験で、レクチンとオステオポンチンを免疫染色で共染色することで、Preconditioningによって血管内皮でオステオポンチンの発現が上昇すること、P2X4受容体阻害剤である5BDBDでPreconditioningによる血管内皮におけるオステオポンチン発現上昇が抑制されることを明らかにした。次に5BDBDを投与することによりPreconditioning効果を抑制したのちに、オステオポンチンのリコンビナント製剤を投与することで、60分の中大脳動脈閉塞に対して、梗塞範囲を縮小させることが出来た。これによりP2X4受容体阻害による失われた虚血耐性がオステオポンチンで補うことが明らかになり、虚血耐性獲得にP2X4受容体からの刺激を受けたオステオポンチンが関与していることを明らかにすることが出来た。 以上研究内容をまとめ「The P2X4 receptor is required for neuroprotection via ischemic preconditioning Running headline」という論文を現在投稿中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
中大脳動脈閉塞モデルや脳室内投与の実験をすでに習得していたため動物実験が順調にすすんだことやP2X4受容体とオステオポンチンの関連性に関して、コンディショナルノックアウトマウスを作成することを選択し順調に作成が出来たため研究が当初の予定よりも早く遂行することが出来た。
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Strategy for Future Research Activity |
一過性脳虚血時に血流の停止や再還流をP2X4受容体が感知することにより生じた遺伝子発現や蛋白発現が神経細胞に保護的に働くメカニズムを解明し、虚血耐性現象を用いた血管内皮細胞よる脳保護の分子メカニズムに関する実験は順調に進行した。この実験に関して論文投稿を引き続き進めていく予定である。 今後の実験テーマに関して、脳主幹動脈が閉塞した際に脳梗塞重症度に関わる要因のひとつに、脳軟膜動脈吻合を介した側副血行路の発達が関与している。脳側副血行路が発達していれば他血管からの血流が虚血巣に流入し梗塞に陥るのを防ぐ。マウスでは一側総頸動脈閉塞による慢性的な低潅流負荷が、同側脳半球での脳軟膜動脈吻合の発達を 促進することが報告されている。今後の研究では、まずは側副血往路を発達させる実験系を確立させていく。また、高血圧自然発症モデルなど脳血管内皮機能障害を有する動物では側副血行路の発達過程が抑制されていることや、脳側副血行路の発達にはシェアストレスが関与していることが報告されており血管内皮が側副血行路の発達に強く関わっていると考えられる。現在の研究テーマの中心としている分子である血管内皮に存在するP2X4受容体がシェアストレス感知に関与していることに着目し、現在飼育しているP2X4受容体コンディショナルノックアウトマウスを用いて側副血行路の発達にP2X4受容体がどのように関与しているのかを解明していく。またP2X4受容体を介する側副血行路の発達に関与する分子や経路を解明していく予定である。この側副血行路のメカニズム解明は将来的に、ヒト脳梗塞に対する予後改善に大きく貢献できると考えている。
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Causes of Carryover |
実験がスムーズに進行し試薬が少量で終了できたこと、また実験がうまくいかなかった際に予定していたマウスや実験試薬が必要でなかったことなどがある。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本年度の実験がスムーズに進行したため、新規研究テーマである脳軟膜動脈を介した側副血行路の発達というテーマを設定した。この新しい研究に対して新規試薬の購入やマウスの購入、飼育に使用する予定である。また現在の研究であるP2X4受容体を介した脳虚血耐性の獲得に関しては論文投稿まで進んでおり、論文が掲載されたのちには、国際学会での報告なども計画している。
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