2015 Fiscal Year Research-status Report
新規ホウ素化ポルフィリンの光線力学的治療およびホウ素中性子捕捉療法への有用性
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15K19982
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Research Institution | Osaka Medical College |
Principal Investigator |
平松 亮 大阪医科大学, 医学部, 助教 (40609707)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ホウ素中性子捕捉療法 / 光線力学的療法 / ホウ素化ポルフィリン |
Outline of Annual Research Achievements |
悪性神経膠腫は正常脳への浸潤性格を有するため、その多くは局所再発を認める。そのため局所制御能力の高い治療法が必要で、ホウ素中性子捕捉療法(BNCT)および光線力学的療法(PDT)といった局所制御にたけた治療法が必要である。ホウ素化ポルフィリンはポルフィリンが有する腫瘍親和性とホウ素クラスターを容易に結合することができるため、この2つの治療法に約束された化合物である。 研究代表者はPDTおよびBNCTに両治療における効果が期待できる数種の新規ホウ素化ポルフィリン(H2OCPを中心にいくつかの薬剤)を国内研究協力者である中村浩之教授(東京工業大学 科学技術創成研究院 化学生命科学研究所)および切畑光統教授(大阪府立大学 BNCT研究センター)、国外研究協力者であるVicente教授(ルイジアナ州立大学)より提供を受けている。彼らはすでにこの薬剤を用い毒性実験を行い、その安全性は確立されている。研究代表者はこれらのうちいくつかの薬剤でPDTの光感受性物質として十分な効果があることを確認している。さらには現在までに臨床BNCTで使用されてきたホウ素化合物(BPA, BSH)との比較で腫瘍細胞への集積特性(停留時間、暴露濃度・時間の変化による薬剤細胞集積)についても確認した。また脳腫瘍モデルラットを用い、H2OCPを中心とした候補薬剤の全身投与を実施し、薬剤分布を検討したが静脈内投与での脳腫瘍への移行は不十分であり、当初の計画通りCEDによる投与形態が望ましいと思われた。PDTの光感受性物質として効果を認め、かつ脳腫瘍細胞への集積性が高い薬剤を中心に、脳腫瘍モデルでの至適投与条件を決定し中性子照射実験による生存期間延長効果を確認していく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在実験用原子炉が休炉中であり、中性子照射実験を行うことができていない。また薬剤生合成の遅れも若干生じた。しかし実験用原子炉は今後再開予定であり、また化合物生合成に関してもその後順調に進行している。そのため現段階で期待されるいくつかの新規ホウ素化ポルフィリンを用い、F98グリオーマ細胞を用いた細胞内ホウ素濃度測定を、F98グリオーマ移植担脳腫瘍モデルラットに対し薬剤の静脈内投与またはCEDによる投与を行い組織内ホウ素濃度(腫瘍および腫瘍側脳、対側脳、その他全身臓器)をICP-AESを用い確認し、薬物動態の解明と至適投与条件の検討を加え、中性子照射に向けたプロトコールの選定・薬剤絞り込みを行っている。現段階では平成28年度に実施予定の中性子照射実験に向けての準備は整っている。
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Strategy for Future Research Activity |
実験用原子炉は再稼働予定であり、また化合物生合成もその後順調に進行しており、問題は克服されている。新規ホウ素化ポルフィリンの開発は国内・国外で活発であり、研究代表者は研究協力者達とやり取りを継続し、よりPDTおよびBNCT両治療に効果が期待でき臨床応用につながる新規ホウ素化ポルフィリンを絞り込んでいく。またポルフィリンと同じく複素環式芳香族炭化水素であるクロリンが結合したホウ素化クロリンもホウ素化ポルフィリン同様にPDTおよびBNCT両治療に応用可能であり期待されている。研究代表者はすでにin vitro / in vivo studyを行いその効果を確認している。この新規ホウ素化クロリンも薬剤絞り込みの中に含め検討を行い、最適な化合物投与条件を確定し、中性子照射実験を行い臨床応用について検討に入る。
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Causes of Carryover |
平成27年度予定予算の一部分は、新規ホウ素化ポルフィリンおよび新規ホウ素化クロリンの脳腫瘍モデルラットおよび正常ラットを用いたin vitro / vivo中性子照射実験およびin vitro / vivo PDT studyによるパイロット研究に使用予定であったが、原子炉使用制限や薬剤生合成に若干の遅れを生じたことから、平成28年度に使用を予定し準備が整っている。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
薬剤生合成の遅れが若干認めたため、H27年度予定であった脳腫瘍モデルおよび正常ラットを用いた薬剤集積・分布実験をいくつかの化合物で追加施行する必要があるためこれに使用予定としている。薬剤生合成の遅延は現在解消されており、平成27年度に予定していた研究計画の一部を平成28年度に遂行し、全体としてのわずかな計画の遅れを修正していく予定である。
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Research Products
(7 results)