2015 Fiscal Year Research-status Report
ヒト滑膜幹細胞の軟骨分化能を維持したまま増殖を促す培養法の確立
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15K19987
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
小田邉 浩二 東京医科歯科大学, 再生医療研究センター, 助教 (70737288)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 滑膜幹細胞 / サイトカイン / 軟骨分化能 / 増殖能 |
Outline of Annual Research Achievements |
関節症は疼痛や運動制限をもたらし生活の質に直結する。関節症の医療費は2兆3000億円に達し、また要介護となる要因の10%が関節症に起因している。 軟骨・半月板の損傷が起こる関節症に対する根治的な治療法は高額な人工関節置換術以外に無いのが現状で、再生医療の開発が最も期待される分野の一つである。 滑膜間葉系幹細胞 (以下、 滑膜幹細胞 )は 増殖・軟骨分化能が高く、当施設では2008年から軟骨・半月板再生を目的とした医療の臨床研究を実施している。 10 %自己血清を用いて初代滑膜幹細胞を14 日間培養し移植に用いているが、移植する細胞は多いほどよい結果が得られまた増殖が十分でない症例を経験することがある。滑膜幹細胞の軟骨化能を促進し、かつ増殖を促進する方法を模索した結果、IL-1β と TNF α等のサイトカインの添加及び、低酸素で培養が有用と考えるに至った。 本研究課題ではこれらの有用性を客観的に示すともに、その機序を明らかにし再生医療技術の発展を目指す。 本年度の成果としては、IL-1β、TNF α等の滑膜幹細胞に対する効果の解析については、いずれも一定の濃度でin vitroでの軟骨分化能を維持したまま増殖を促進できることを示した。内容は国内外の主要学会で演題として採択され、論文として作製準備している。低酸素培養の効果についても、5%低酸素環境が細胞接着能、増殖能に及ぼす影響を調べ、特に増殖能を高める効果を明らかにし、国内・国際学会で採択、発表の機会を得、現在論文を科学雑誌に投稿中である。研究代表者が所属する研究チームでは、滑膜幹細胞の細胞操作技術を特許化済(特許 第5656183号:滑膜由来間葉幹細胞(MSCs)の軟骨・半月板再生への応用)である。本研究課題により得られた成果は特許化した技術とシナジーすることにより、再生医療の基盤技術開発に貢献できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
IL-b1、TNF α等の滑膜幹細胞に対する効果の解析については、いずれも一定の濃度でin vitroでの軟骨分化能を維持したまま増殖を促進できることを示した。その成果を国内外の主要学会で発表するとともに、(第29回日本軟骨代謝学会 演題名「TNF αは滑膜幹細胞の増殖を促進する」、演題名「IL-1 βは滑膜幹細胞の増殖・軟骨分化を促進する」、Orthopaedic Research Society 2016 Annual Meeting Orlando, USA "Il-1 β Enhances Proliferation And Chondrogenic Potential Of Synovial MSCs")論文として作製準備している。 低酸素培養の効果についても国内・国際学会で発表するとともに(Orthopaedic Research Society 2016 Annual Meeting Orlando, USA "Hypoxia enhances proliferation through increase of colony formation rate with chondrogenic potential in primary synovial mesenchymal stem cells")、現在科学雑誌に投稿中である。
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Strategy for Future Research Activity |
上記2つ以外にFGF2についても滑膜幹細胞に対する興味深い効果が判明しており、こちらに関しても、データーの取得を終え、論文化を進めている。また、サイトカイン投与前後および低酸素環境下における遺伝子発現プロファイルの解析を行い、培養上清のプロテインアレイ解析でも増殖能の促進効果を説明できる候補となる因子の候補を絞りこんでいく。in vitroの有効性は示されつつあり、今後は可能であれば動物実験モデルで滑膜幹細胞を移植前に当該サイトカインで前処置することによるin vivoの効果も示していくことを視野に入れている。
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Causes of Carryover |
本年度は実験に必要な細胞培養のための物品等は実験室の既存のものを使用できたため、さらに条件設定のプロセスが順調に進み、サイトカイン使用量が予想より少なく抑えられたため経費を抑えることができた。また実験に必要なサンプルそのものの入手は手術時の検体が得られた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今後は実験結果解析のための物品を購入する必要がある。また、引き続き学会発表の予定もあり、学会参加費・旅費等が必要になる。
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Research Products
(3 results)