2015 Fiscal Year Research-status Report
マウス大腿骨骨折モデルを用いた軟骨の体内時計の機能の解明
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15K20012
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Research Institution | Kyoto Prefectural University of Medicine |
Principal Investigator |
南 陽一 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (40415310)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 概日リズム / 発光イメージング / 軟骨 / ATDC5細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
大腿骨骨折部の体内時計の存在を確認するためにマウス大腿骨骨折モデルを作成した。この目的で、体内時計の状態をホタルルシフェラーゼ(Luc)遺伝子を用いて可視化するレポーター遺伝子を導入したマウス(PER2::Lucノックインマウス)を用いた。発光イメージング装置を用いた観察により、骨折治癒部の軟骨組織に明瞭な概日リズムを示す発光を認めた。 細胞レベルの評価ができるようにするため、軟骨細胞のモデルであるATDC5細胞を用いた検討を行った。初めに、未分化状態のATDC5細胞に、ゼオシン耐性マーカーと時計遺伝子Bmal1のプロモーター領域にLuc遺伝子をつないだBmal1:Luc遺伝子をもつプラスミドを導入した安定導入株を樹立した。この細胞を株化細胞で概日リズムを惹起することが知られていたデキサメタゾンで刺激した結果、明瞭な発光の概日振動が惹起された。ATDC5は、インスリン・トランスフェリン・亜セレン酸ナトリウム存在下に軟骨細胞に分化する。そこで、分化培地に置き換えて0、7、14、21日目の細胞の軟骨細胞のマーカー遺伝子(Col2a、Aggrecan、Col10a1)の発現量をリアルタイムPCR法により確認したところ、経日的にマーカー遺伝子の発現量が増加することを確認した。また、21日目のATDC5細胞を軟骨基質を染めるアルシアンブルーで染色したところ、明瞭な陽性反応を観察した。さらに、分化0、7、14、21日目それぞれの時点で、ATDC5細胞に明らかな概日リズムを認めた。これまでに、大腿骨を器官培養し、成長軟骨部に体内時計があり、副甲状腺ホルモン(PTH)によって位相変位する(時刻が変わる)ことを示した。そこでATDC5細胞に対し、PTHを投与して影響を評価したところ、Bmal1:Lucの発光リズムに位相変位が認められた。この反応の大きさはPTH投与タイミング依存的だった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
以下に述べる通り、大腿骨骨折モデルを確立し、骨折治癒過程で軟骨に体内時計が存在することを明らかにした。また、骨折治癒部の体内時計の詳細の評価に重要な、軟骨細胞の体内時計を評価するための系を構築した。このことから、研究はおおむね順調に進展していると考える。 具体的には、創外固定器を利用したマウス骨折モデルを確立し、組織レベルで観察が可能な発光イメージングシステムを駆使することで、骨折治癒部の軟骨に体内時計が存在することを見出した。骨折治癒部の軟骨における体内時計の生理的意義の評価を進める上で、組織レベルでの検討では、組織量や材料の均質性に関する問題が生じることが懸念された。このため、細胞レベルの評価系の準備が重要であると考えられた。ATDC5細胞を用いた実験系で体内時計による発光の概日リズムが観察できたこと、特に、軟骨に分化させた状態で概日リズムを観察できたことは、軟骨の体内時計の意義の理解を進める上で重要なステップであると考える。ATDC5細胞に対し、PTHを投与した場合に、体内時計の時刻依存的な位相応答が観察された。器官培養下の大腿骨においても、同様のPTHによる時刻依存的な位相応答が観察されており、軟骨細胞の体内時計の理解の目的でATDC5細胞を用いる妥当性を支持する結果だと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、骨折治癒部の体内時計に関し、組織レベル、細胞レベルの解析を発展させたい。骨折モデルに関しては、体内時計の機能解析を進めるために、より適切な条件を検討する。軟骨の体内時計の生理的意義を議論するためには、体内時計に摂動を加え、出力に与える影響を検討することが重要だと考える。この目的で、PTHに加え、他の体内時計に影響を与える因子の同定を試みる。一例として、温度刺激を考える。体内時計の刻む一日の長さは、例えば高緯度の低温地帯でも、赤道部の高温地帯でも、ほぼ同じである。一方で、体内時計は外界の周期的な温度変化に対応してリズムを同調させることができる。体温リズムには明瞭な概日振動が知られることから、体温変化は、末梢組織(例として大腿骨軟骨部)に存在する体内時計を、体全体のリズムに同調させる因子の一つであると考えられる。体内時計の温度刺激に対する反応性について、組織レベル、細胞レベルで、検討を進めていく考えである。
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Causes of Carryover |
適切な支出を心がけ、必要に応じた支出を行った結果、少額の未使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
実験計画に大きな変更はなく、最終年度分と合わせ、適切に支出する。
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[Presentation] Temperature is a time cue to cartilages2016
Author(s)
Naoki Okubo, Yoichi Minami, Hiroyoshi Fujiwara, Tatsuya Kunimoto, Toshihiro Hosokawa, Ryo Oda, Toshihiro Kubo, Kazuhiro Yagita
Organizer
62th Annual Meeting of Orthopaedic Research Society
Place of Presentation
Orland, United States
Year and Date
2016-03-07 – 2016-03-07
Int'l Joint Research
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