Outline of Annual Research Achievements |
変形性膝関節症(膝OA)の多岐にわたる分子レベルの病態の理解はいまだ乏しく, 病態の主座である軟骨変性のみでなく, 半月板・軟骨下骨・骨棘・滑膜等にも焦点をあて研究する必要性が求められている. 我々は, 滑膜に発現するパールカンに焦点をあて, その発現が欠損すると滑膜間葉系細胞(MSCs)から軟骨への分化を経て, 骨棘へ分化する過程の初期段階が抑制されることをin vivo, in vitroにおいて示してきた. しかし, 滑膜のパールカンの膝OAの骨棘形成過程にはいまだ不明な点が残る. 本研究の目的は, 膝OAに対するパールカンの治療応用へ向け, 膝OAの骨棘形成早期の病態における滑膜に発現するパールカンの機能を検討した. 関節内でパールカンを軟骨でのみ発現し滑膜で発現しないマウス(Hspg2-/-Tg)と同腹の野生型マウス(WT)に対して, 内側半月板切除及び内側側副靭帯切離による膝OAを誘導した. 術後1週の膝関節を組織学的に評価した. 膝OA誘導モデル術後1週では, 両群ともに非手術側に対して関節軟骨の変性スコアに差を認めなかった. 軟骨棘を含む骨棘は両群ともに形成され, 大きさに差は認めないものの, 成熟度はHspg2-/-が有意に低値であった. さらに, 滑膜表層細胞数, 炎症細胞浸潤, 表層のフィブリン沈着, 新生血管, 繊維化, 血管周囲浮腫にて評価した滑膜炎スコアは, Hspg2-/-が有意に高値であった. 骨棘は, 一般的には関節リウマチに比べ膝OAにて旺盛に認められる. 本研究の結果から, 滑膜間葉系細胞の軟骨分化能のみならず, 滑膜の炎症も骨棘形成に関与する可能性が示唆された. 滑膜のパールカンが欠損すると, 膝OA早期の関節軟骨変性に差を認めないものの, 骨棘形成は抑制され, 滑膜炎が促進した.
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