2015 Fiscal Year Research-status Report
麻酔薬は本当に手術痛を抑制しているのか?:侵害刺激誘発電位による検討
Project/Area Number |
15K20040
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
峰村 仁志 信州大学, 医学部附属病院, 特任研究員 (40635877)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 神経科学 / 疼痛学 / 麻酔薬 / 誘発電位 |
Outline of Annual Research Achievements |
術中に刻々と変化する手術侵襲による侵害刺激の大きさや,患者が体験している痛みの程度をモニタリングする方法はいまだに存在しない.最近,真皮から表皮に分布しているのがC線維およびAδ線維であることに着目して,浅在性のこれら侵害受容性の一次知覚線維を特異的に電気刺激できる装置(PNS-7000, 日本光電)が開発された(Kodaira, Kakigi et al., Clin Neurophysiol 2014).本装置を用いると,C線維およびAδ線維の刺激による一次知覚脳皮質の電位変化(Nociceptive Stimulation-evoked potential: NSP)が分別して記録できる. 事前に研究内容について説明し,研究参加への同意を得た予定手術患者を対象に,上記方法で麻酔開始前のNSPの測定を行った.表皮内刺激電極(NM-980W, 日本光電)を足背に貼付し,最小知覚閾値の1.5倍で刺激し,脳波記録装置(Neuropack X1,日本光電)で記録した. 結果として,先行研究で示されていたものと同様の陰性波-陽性波混合波形(N2-P2)が記録された.その後,レミフェンタニルを効果部位濃度2.0 ng/mlで静脈内持続投与し,同様にNSP測定を行った. レミフェンタニル投与時のC線維刺激P2振幅(4.3 ± 2.4 μV)はレミフェンタニル投与前(10.5 ± 2.5 μV)と比べ有意に低かった.Aδ線維についても同様であり,レミフェンタニル投与時(5.8 ± 4.5μV)はレミフェンタニル投与前(22.6 ± 9.1μV)に比べ有意に低かった. 以上より,レミフェンタニルはC線維およびAδ線維刺激によるNSPを抑制した.これはNSPが痛みのモニタリング手法として有用である可能性を示唆するものと考える.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
NSP測定系の確立はすみやかに行われ,レミフェンタニルのNSPに対する影響が評価できた.
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は,医療用麻薬であるレミフェンタニルのNSPに対する影響を評価した.手術中には静脈麻酔薬や揮発性麻酔薬も同時に投与されており,NSPに影響を与えている可能性がある。今後は、現在広く利用されているセボフルランやプロポフォールを用い,NSPへの影響を研究する.
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Causes of Carryover |
当初計画で見込んだよりも安価に研究が進んだため、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額は平成28年度請求額と合わせて消耗品費として使用する。
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