2015 Fiscal Year Research-status Report
一酸化窒素合成酵素系完全欠損下の脳梗塞縮小現象と次世代治療確立への応用
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15K20049
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
久保田 陽秋 琉球大学, 医学部附属病院, その他 (10600421)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 脳虚血 / 再灌流 / 一酸化窒素合成酵素 / 欠損 / マウス / 性差 / エストロゲン / テストステロン |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度の研究実施計画に記載した「マウス脳梗塞モデルにおけるNOSs系の役割の解明」について、野生型マウスと比較し脳梗塞側半球(右半球)におけるperoxynitrite発現量の低下がNOSs系完全欠損マウスで見られた。peroxynitriteはスーパーオキサイドと一酸化窒素(NO)が反応して生じる強力な酸化物質である。すなわち、予備的研究で得られたNOSs系完全欠損マウスでの脳梗塞巣サイズ縮小現象の機序を説明するものとして矛盾のない結果が得られている。 さらなる機序の解明のためにCaイオン可視化による神経細胞死シグナルの定量化を計画していたが、現時点では未実施である。 機序の解明の手がかりとして、神経細胞死の経路に性別による違いが報告されている。メスマウスについても同様の脳梗塞誘導実験を行ったところ、他の研究者によるnNOS欠損マウスと野生型マウスの研究で報告されているような脳梗塞巣サイズにおける雌雄間の逆転現象(オス:野生型マウス>NOSs系完全欠損マウス、メス:野生型マウス<NOSs系完全欠損マウス)を認めた。このことからnNOSの有無と女性ホルモンであるエストロゲンの関与を考えた。しかし、NOSs系完全欠損メスマウスの卵巣摘除後に脳梗塞を誘導したところ、偽手術群と比較し卵巣摘除群で脳梗塞巣サイズが縮小すると予想していたにも関わらずサイズに差を認めなかった。そこで、NOSs系が完全に欠損した状況での男性ホルモンであるテストステロンの有無が影響する可能性を考えた。NOSs系完全欠損オスマウスの精巣摘除後に脳梗塞を誘導し脳梗塞サイズに差が生じるかを現在検討中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
虚血再灌流による脳障害の病態におけるNOSs系の役割の解明について鋭意実験を進めている。peroxynitriteの酸化障害がNOSs系完全欠損マウスで低下していることがウエスタンブロットによるチロシンニトロ化タンパクの定量で確認できた。しかし、その後の実験進捗については研究設備・技術の限界もあり、研究実施計画に示した実験計画と比較し遅延し停滞している状況である。それに代わり今後は、他施設に委託し、脳梗塞病態における網羅的かつ定量的な遺伝子発現を調査する目的でRNA次世代シーケンシング解析を計画している。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)2種のマウス(野生型マウスおよびNOSs系完全欠損マウス)を用いて虚血再灌流ストレスが生じた脳組織におけるRNA次世代シーケンシング解析を行うことで、NOあるいはNOSが関与する遺伝子・タンパク発現の変化を捕捉し、脳梗塞巣形成の病態解明を進める。 (2)nNOS欠損マウスと野生型マウスの比較で見られた脳梗塞巣サイズのオスメスでの逆転現象(オス:野生型マウス>nNOS欠損マウス、メス:野生型マウス<nNOS欠損マウス)について、他の研究者らが脳梗塞の病態におけるエストロゲンの関与を報告しており、我々は卵巣を摘除したNOSs系完全欠損メスマウスで卵巣摘除と偽手術を施した2群の脳梗塞巣サイズの比較を行ったが、当初期待していた卵巣摘除群<偽手術群の結果とならなかった。そこで、nNOSだけでなくNOSs系が完全に欠損した状況におけるテストステロンの関与の方に着眼し精巣摘除を行って脳梗塞サイズがどのように変化するかを検討することとした。
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