2015 Fiscal Year Research-status Report
肺胞上皮細胞における低酸素誘導性因子の機能解析と肺傷害治療開発に向けた基盤研究
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15K20054
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
東條 健太郎 横浜市立大学, 附属病院, 指導診療医 (80737552)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 肺傷害 / 細胞死 / 低酸素誘導性因子 / プロリルヒドロキシラーゼ阻害 |
Outline of Annual Research Achievements |
肺胞上皮細胞においてHIFを活性化する方法として,臨床応用の可能性を考えてプロリルヒドロキシラーゼ阻害剤を用いることとした.プロリルヒドロキシラーゼ阻害剤としては,今までに多数の報告があり,また,当研究室にて使用実績のあるジメチルオキサリルグリシン(DMOG)を用いた. まず最初にin vitroで肺胞上皮細胞に対するプロリルヒドロキシラーゼ阻害の効果を調べるために,in vivoにおける肺傷害にrelevantだと考えられるin vitro肺胞上皮細胞傷害モデルの構築を行った.当初,マウス肺胞上皮細胞細胞株のMLE12,MLE15細胞にLPSを投与することで細胞死が生じるか確かめたが,MLE15細胞において高濃度のLPS投与(100μg/ml)を行った際に軽度の細胞死が見られるのみであった.肺傷害における組織障害には好中球が関与することが知られていることから,マウスから単離した好中球をLPSで刺激することで肺胞上皮細胞傷害を引き起こすモデルの構築に切り替え,MLE12細胞と単離好中球を共培養し,LPSで刺激することでMLE12細胞の生存率が大きく低下するモデルを構築することができた. このLPS刺激された好中球によるMLE12細胞傷害モデルにおいて培地に予めDMOGを加えておくと,濃度依存的に細胞死が抑制できた.さらに,MLE12細胞にsiRNAをトランスフェクションすることでHIF-1α,HIF-2αをノックダウンした所,HIF-1αノックダウンによってDMOGの細胞死抑制効果が消失することが示された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画ではウイルスベクターの構築をするとしていたが,臨床応用の観点からプロリルヒドロキシラーゼ阻害剤DMOGを用いて肺胞上皮細胞保護が出来ないか検討を行うこととした結果,スムーズに実験が進められている. in vivoでの肺傷害にrelevantだと考えられるin vitro肺胞上皮細胞傷害モデルの構築に成功し,DMOGがそのモデルにおいて肺胞上皮細胞の細胞死を抑制することを明らかにできた.また,この肺胞上皮細胞保護効果がHIF-1依存的であることをsiRNAを用いた実験によって明らかにできた.これらの結果が示されたことは本研究の「低酸素誘導性因子を用いた肺胞上皮細胞保護による肺傷害治療法の開発」という目標に向けて順調に進展している状況だと考えられる.
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Strategy for Future Research Activity |
今後,同様にLPS刺激好中球による肺胞上皮細胞傷害モデルを用いて,プロリルヒドロキシラーゼ阻害による細胞死抑制メカニズムについて検討を行う.細胞死のメカニズムを明らかにするとともに,低酸素誘導せ因子による代謝リプログラミングに着目し,メカニズムの解析を行う. また,肺胞上皮細胞保護効果が動物モデルにおいても見られるのか,予後改善効果があるのかといった観点から動物実験を行う.
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Causes of Carryover |
当初計画していたウイルスベクター作成ではなく,プロリルヒドロキシラーゼ阻害剤の効果を検討したために,当該年度の使用額が予定よりも少なかった.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
プロリルヒドロキシラーゼ阻害剤による細胞保護効果のメカニズムについて今後研究をしていく.その際にフローサイトメトリーや細胞のイメージング,さらには細胞死に関わるパスウェイのsiRNAを用いた阻害実験の試薬購入に充てる.
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