2015 Fiscal Year Research-status Report
吸入麻酔薬によるPer2発現抑制機構の解明-ICU症候群の機構解明を志向して-
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15K20062
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Research Institution | Nippon Medical School |
Principal Investigator |
肥後 心平 日本医科大学, 医学部, 助教 (50623922)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | セボフルラン / 時計遺伝子 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目標は, これまでに申請者のグループが明らかにした『吸入麻酔薬sevoflurane投与により, ヒストンアセチル化等のエピジェネティックな機構を介して視交叉上核の時計遺伝子Per2の発現が抑制される』という現象の, より詳細な分子機構を明らかにすることである. 平成27年度の研究成果は大きく2つに分けられる. ①視交叉上核に存在する多くの神経細胞がGABA作動性であり, またGABAに対する受容体を発現しているという報告から, sevofluraneによるPer2発現抑制作用もGABA情報伝達を介している可能性を考え, GABA受容体の阻害剤存在下におけるsevofluraneの作用を解析した. この結果, GABAa受容体およびGABAb受容体の阻害剤を共投与した時にsevofluraneによるPer2発現抑制効果が消失することを明らかにし, 論文化した(Matsuo et al. Neurosci Res). ②これまで実験で用いてきた視交叉上核の切片培養では, 実験条件が安定しづらく, 試料の均質性を担保することが大きな課題となっていた. そこで, 均質な試料を得るために, 視交叉上核の神経細胞と同様なsevoflurane応答性をもった不死化細胞株の選定および, その細胞株にPer2プロモーター制御ルシフェラーゼの導入を行った. スクリーニングの結果, 視床下部由来の不死化細胞株GT1-7において麻酔応答性が示され, 以降の麻酔負荷実験に利用できるようになった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度に, sevofluraneによる視交叉上核Per2発現抑制にGABA受容体が関わるという論文報告を行い(Matsuo et al. Neurosci Res), また, 不死化細胞株の選定とそれを用いた実験系の樹立に関して論文投稿を行っており(3月現在査読中), 比較的順調な結果が出ていると考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
27年度までの研究により, 不死化細胞株を用いた実験系が運用可能になり, 麻酔を負荷した試料の均一性がこれまでの視交叉上核の切片培養を用いたものよりも向上したと考えている. また, 現在, 6サンプルを同時に麻酔処置し, ルシフェラーゼの化学発光を同時モニタリングするシステムを構築中であり, ウエスタンブロッティングによるリン酸化アッセイ等の生化学的解析を行える状況ができつつある. これらの実験系を用いて28年度は, Per2の発現制御をおこなう転写調節因子であるCLOCK蛋白質のリン酸化解析と, 細胞内のカルシウム動態を中心に解析をすすめる予定である.
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Causes of Carryover |
研究計画内容等には変更はないが, 購入物品の量が予定よりも少数で済んだこと, および個々の各物品費用が予定額よりも安かったことなどから次年度使用額が生じた.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
28年度, 29年度には生化学的解析を行うための試薬類やキット類の購入, また27年度に樹立した不死化細胞株の維持費用等に物品購入費を充てる必要があるため, 27年度からの次年度使用額を当該年度使用額に加えて使用する予定である.
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