2015 Fiscal Year Research-status Report
エストロゲン受容体βからみた非細菌性慢性前立腺炎の病態解明
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15K20097
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Research Institution | Oita University |
Principal Investigator |
溝口 晋輔 大分大学, 医学部, 医員 (70751733)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | エストロゲン受容体 / デュタステリド / 前立腺炎 |
Outline of Annual Research Achievements |
非細菌性慢性前立腺炎に対するエストロゲン受容体の関連を明らかにするために、ラット非細菌性前立腺炎(NBP)モデルを用いて、前立腺における炎症性サイトカインとエストロゲン受容体α(ERα)およびERβのmRNAの発現について検討した。NBPモデルにおいてIL-1β、IL-18、ERαの発現増大、ERβの発現低下を認めた。前立腺切片のHE染色による組織学的評価では、NBPモデルにおいて、前立腺上皮の萎縮、変形と、炎症性細胞の浸潤を認めた。ERβに対する免疫染色では、炎症性の変化をきたした前立腺上皮において、ERβの染色像が減弱していた。非細菌性前立腺炎において、抗炎症作用をもつとされるERβの発現低下が、炎症の慢性化に関わっていることが示唆された。さらに非細菌性前立腺炎に対するデュタステリドの抗炎症作用を検討するため、NBPモデル作成2日前よりデュタステリド0.5mg/kg/日を経口投与し、4週間後の炎症性サイトカインおよびERsのmRNA発現について、溶媒投与群と比較した。その結果、デュタステリド投与群では、溶媒投与群と比較し、IL-1β、IL-18、ERαの発現が有意に低下していた。対照的にERβの発現は有意に増大していた。このことから、デュタステリド投与による非細菌性前立腺炎に対する抗炎症作用と、その作用機序にERβの発現増大が関わっていることが示唆された。今後ERβのリガンドと考えられるエストロゲン定量評価や、アンドロゲン受容体の発現解析を予定し、デュタステリドによる抗炎症作用とERとの関連についてさらに解析をすすめる予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ラット非細菌性前立腺モデルにおいてエストロゲン受容体βの発現が減弱し、エストロゲン受容体αに対する相対的な発現比も減弱していた。非細菌性前立腺炎モデルラットにデュタステリドを投与した群では、炎症性サイトカインの発現が減弱しているとともに、エストロゲン受容体βの発現が増大していた(コントロール群と変わりなかった)。このことからエストロゲン受容体βの発現の低下が炎症の慢性化に関連している可能性が指摘された。さらにデュタステリド投与による抗炎症効果にはエストロゲン受容体βの発現増大が関連していると考えられた。これらのことから、前立腺の炎症には、エストロゲン受容体サブタイプの発現比が関連していることが、確認できたため。
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Strategy for Future Research Activity |
デュタステリド投与による非細菌性前立腺炎の炎症改善効果について解析をすすめる。デュタステリド投与によるERβ発現増大のメカニズムについて、前立腺組織内のエストロゲンが重要なリガンドではないかと考えている。今後前立腺組織内の検討のエストロゲンの定量を予定する。またエストロゲン受容体βとアンドロゲン受容体との相互関連についても報告されており、アンドロゲン受容体の発現についてもRT-PCR, ウェスタンブロット、免疫染色で解析を予定する。
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Research Products
(1 results)