2015 Fiscal Year Research-status Report
LH作用の分子メカニズムの解明による新規排卵誘発法の開発
Project/Area Number |
15K20126
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
山下 宗一 群馬大学, 医学部附属病院, 講師 (10516412)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ラット顆粒膜細胞 / レチノイン酸 / プロゲステロン産生 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、ラット卵巣顆粒膜細胞におけるプロゲステロン産生に全トランス型レチノイン酸(以下、ATRA)が及ぼす影響について検討した。 【方法】DES処理した幼若ラットより顆粒膜細胞初代培養系を作成した。(1)この培養系におけるRAR(retinoic acid receptor)、RXR(retinoid X receptor)、RALDH(retinaldehyde dehydrogenase)のmRNA発現をRT-PCR法で検討した。次いで、ATRA(10μM~100μM)投与時の以下の項目を検討した。(2)ELISA法を用いて培養液中のプロゲステロン量を測定した。(3)定量的RT-PCR法を用いてStAR mRNA、Cyp11a1 mRNA、3βHSD mRNAを測定した。(4)ELISA法を用いて細胞内cAMP濃度を測定した。(5)Western blot法を用いてCREB(cAMP response element binding protein)のリン酸化を測定した。(6)H89(PKA inhibitor)を共添加した時の、StAR mRNA、Cyp11a1 mRNA、および培養液中のプロゲステロン量を測定した。 【結果】(1)本培養系において、RARα mRNA、RARγ mRNA、RXRα mRNA、RXRβ mRNA、RALDH1 mRNAは恒常的に発現していた。RARβ mRNAは、ATRA投与によって発現が誘導された。 (2) ATRA投与は培養液中のプロゲステロン量を増加させた。(3) ATRA投与はStAR mRNAとCyp11a1 mRNAの発現を増強させたが、3βHSD mRNAの発現には影響を与えなかった。 (4) ATRA投与は細胞内cAMP濃度を増加させた。(5)ATRA投与はCREBをリン酸化させた。(6)ATRA投与によるStAR mRNAとCyp11a1 mRNAの発現増強、および培養液中のプロゲステロン量の増加はH89により抑制された。 【考察】レチノイン酸は、顆粒膜細胞においてcAMP pathwayを介してプロゲステロン産生を増加させることが示された。生体内でレチノイン酸は、ゴナドトロピンや他の局所因子と協調して卵巣機能を修飾していると考えられ、さらなる解明が求められる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
幼若ラットの顆粒膜細胞を採取して行う実験系のため、一度に採取できる細胞量が限られているのが一番の問題点である。また、同実験系を行っている研究機関が少なく、実験系の確立に時間を要するのも進捗を遅れらせている原因である。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの実験においてレチノイン酸が顆粒膜細胞のプロゲステロン産生に影響を与えうることがmRNAレベルで解明されたため、そのシグナル伝達機序につきWestern-blot 法などを用いて実際のタンパクレベルでの変化につき解明を進めたい。また、レチノイン酸単独のみならず、ゴナドトロピンとの相互作用についても検討を進める予定である。問題点としては採取できる細胞量に限りがあり十分なタンパク質量を採取できない可能性があること、また細胞採取の段階で生理的状態から変化を起こしてしまっている可能性が大きいことが挙げられる。
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