2015 Fiscal Year Research-status Report
卵巣癌においてベバシズマブ抵抗性をもたらす腫瘍免疫抑制機序の解明
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15K20140
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
安彦 郁 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (20508246)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | VEGF / MDSC |
Outline of Annual Research Achievements |
マウス卵巣癌細胞株HM-1を同系の免疫正常マウスに接種し、腫瘍を形成させた後、マウスVEGF抗体を投与して治療を行い、腫瘍を回収し、アイソタイプコントロール抗体投与群と比較した。この際、腫瘍回収前に低酸素マーカーをマウスに投与しておき、腫瘍の低酸素マーカーを免疫染色したところ、VEGF抗体投与群では腫瘍が低酸素状態にあることがわかった。また、回収した腫瘍をマイクロアレイ解析したところ、pathway解析で、VEGF抗体投与群では、低酸素に関連するHIF1α関連経路や、IL10, IL1などのサイトカイン関連経路が亢進していた。また、COX2が発現亢進していることもわかった。一方で、MDSC誘導因子として知られるIL6経路や、EMT, 血管新生経路などの亢進は認めなかった。 また、MDSCの浸潤の増加を反映して、MDSCのマーカーであるCD11bおよびLy6c2が発現亢進していた。 上記とは別に既存のマイクロアレイデータセットとして、グリオーマのxenoglaftに対しBevasizumabを投与したサンプルとコントロールを比較した、GSE39223を解析したところ、抗VEGF抗体投与群では低酸素関連遺伝子が亢進し、HIF-1αが上昇し、その下流であるCXCL12が上昇していた。CXCL12がMDSCを誘導する可能性がある。 以上より、VEGF抗体投与によるMDSC増加に関わる分子の候補としては、COX2、HIF-1α、CXCL12などが挙げられる。 このうち、COX2とHIF1のinhibitorについては、入手が可能であったため、HM1の担癌マウスへの投与実験を行い、治療効果を確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実施計画にあるとおり、マウス抗VEGF抗体を用いて、投与前後の網羅的遺伝子発現解析を行い、候補遺伝子を絞ることができた。CXCL12の抗体についてはまだ入手できていないが、2016年度には入手でき、機能実験や動物実験に進む予定である。 COX2とHIF1のinhibitorは入手できたので、2016年度に行う予定であったマウス治療実験まで先駆けて行った。
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Strategy for Future Research Activity |
CXCL12およびその受容体の抗体を入手できる予定であるので、これらを用いて細胞機能実験や動物実験を行う予定である。HIF1およびCOX2およびCXCL12受容体について、臨床サンプルの免疫染色も行い、新規免疫療法の開発につながる標的分子の同定を目指す。
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Causes of Carryover |
2015年度にCXCL12とその受容体の抗体を入手して、機能実験を行う予定であったが、年度内に入手することができなかった。その代り、2015年度はHIF1とCOX2の阻害剤を入手して順調に実験を行ったが、CXCL12抗体薬と比較してHIF1とCOX2阻害剤は安価であった。2016年度にはCXCL12抗体薬も入手して実験を進める予定であるため、翌年度分として請求したい。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
CXCL12およびその受容体であるCXCR4の抗体薬を入手し、細胞機能実験および動物治療実験を行う予定である。抗体薬の購入および細胞機能実験に要する試薬の購入は2016年度に行う。
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