2016 Fiscal Year Research-status Report
早産ならびに胎児炎症反応症候群の予防を目的とした胎盤絨毛マクロファージの解析
Project/Area Number |
15K20150
|
Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
山口 宗影 熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 助教 (20626535)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 細胞・組織 |
Outline of Annual Research Achievements |
当初は対象症例を妊娠34週未満の早産症例を検討する予定だったが、妊娠32週未満で臨床情報の検討が可能な46例とした。胎盤の免疫組織化学では、汎マクロファージ(Mφ)を認識する抗体として抗CD68抗体を用いる予定であったが、染色が薄く陽性細胞数の評価が困難であったため、抗IBa1抗体を用いて評価した。抗炎症性Mφの評価は、抗CD163抗体ならびに抗CD204抗体を用いた。BZ-Ⅱ解析アプリケーション(キーエンス社)を用いて、絨毛間質面積あたりのそれぞれの陽性細胞数を解析し、母体の臨床情報や新生児合併症との関連を調べた。 全46症例の平均分娩週数は28週1日(23週2日-32週3日)であった。児の合併症では、脳室周囲白質軟化症(PVL)を6例、脳室内出血を6例、未熟児網膜症を8例、慢性肺疾患(CLD)を10例に認めた。絨毛間質における汎MφマーカーのIba1、炎症制御に関わる抗炎症性MφマーカーのCD163、CD204の陽性細胞数と分娩週数との相関を検討すると、CD163のみに有意に負の相関が認められた(P<0.01)。Iba1とCD163陽性細胞数は児の合併症と有意な関連は認められなかった。CD204陽性細胞数は、非CLD群に比べCLD群では有意に減少していた(P<0.01)。CD163陽性細胞数を、週数と負の相関を示さない妊娠26週以降で検討すると、非PVL群に比べPVL群で有意に減少し(P<0.05)、非CLD群に比べCLD群で有意に減少していた(P<0.01)。 PVLやCLDを合併した早産児の胎盤絨毛において抗炎症性Mφが減少しており、炎症性Mφ優位の環境がPVLやCLD発症に関連していることが示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成27年度までは、研究は計画通りに進んでいた。しかし、平成28年熊本地震の際に、免疫染色後のスライドグラスや実験器具が破損し、研究が一時停止した。 また、当初計画していた、免疫組織化学による炎症性マクロファージや、炎症性サイトカインの特定が困難であった。そのため、抗炎症性マクロファージの数を主な評価項目とした。母児の臨床情報と検討でき、興味深い結果を得た。そのため、計画通りではないものの、想定内の範囲で進捗していると考える。
|
Strategy for Future Research Activity |
当初の研究計画通りではなかったものの、ヒト胎盤絨毛マクロファージの活性型と胎児炎症反応症候群を含んだ早産の新生児合併症との関連に関して、興味深い結果を得た。今後は、論文化して投稿する予定である。
|
Causes of Carryover |
2016年4月に発生した熊本地震により、建物、実験装置や機器に被害があり、計画が遅延した。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度に実施できなかった実験を行うための研究試薬の購入や、成果発表のための国内旅費等に使用する。
|