2016 Fiscal Year Research-status Report
子宮癌肉腫におけるがん胎児性タンパクIMP3を標的とする新規治療戦略の開発
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15K20161
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Research Institution | 独立行政法人国立病院機構(東京医療センター臨床研究センター) |
Principal Investigator |
植木 有紗 独立行政法人国立病院機構(東京医療センター臨床研究センター), その他部局等, 研究員 (60445319)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 子宮 / 癌肉腫 / IMP3 / エピジェネティクス |
Outline of Annual Research Achievements |
IMP3(Igf2 mRNA- binding protein 3)は胎生期の諸臓器および癌で発現している癌胎児性タンパクである。様々な悪性腫瘍においてIMP3の高発現と悪性度や予後との相関が報告されているが、その機能の全容については明らかになっていない。これまでに我々はマウス肉腫モデルを用いて、Imp3が生体内での腫瘍形成能、悪性度に直接寄与する事を明らかにした。そこで、本研究ではヒト癌肉腫におけるIMP3発現を発現強度および分布について解析し、癌腫成分におけるIMP3発現と全生存期間について検討した。その結果、IMP3発現が強く、分布の広い症例ほど予後不良であるという傾向がみられ、特にIMP3発現分布については有意差が認められた。 またマウス肉腫モデルを用いた先行研究で、エピジェネティクス関連薬剤としてDNMT1阻害剤およびHDAC阻害剤を添加すると、Imp3発現はmRNAレベルで上昇した。これは、IMP3発現がエピジェネティックな制御を受けている可能性を示唆する結果である。そもそもIMP3は癌胎児性タンパクであり、胎生期に発現がみられるものの、出生後は正常組織での発現はみられず、癌でふたたび発現がみられる。マウス肉腫モデルの実験から、がんでの発現制御にエピジェネティックな修飾が関わるのではないかという知見を得て、今回は特にヒストン修飾に着目し、関連性を検討することにした。そしてヒト癌肉腫の癌腫成分におけるヒストンメチル化修飾がIMP3と関連し、全生存期間と相関することが明らかになった。これによりヒストンメチル化修飾のようなエピジェネティックな機序が、IMP3発現に上流または下流で関わる可能性があり、癌胎児性タンパクであるIMP3は予後因子としてだけではなく、今後癌肉腫治療標的として有用である可能性があるものと考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
現在までに、ヒト癌肉腫検体を用いたヒストン修飾状態については免疫組織学にて確認し、IMP3発現とヒストンメチル化修飾状態が予後と相関し、さらにIMP3とヒストンメチル化修飾状態が発現一致することまでを見出した。研究計画では、平成28年度にレーザーマイクロダイセクションを用いた遺伝子発現プロファイルおよびmicro RNA発現プロファイルの解析を行う予定であったが、2016年4月に本務先の異動があり、産婦人科医師の退職が相次ぎ、一般産婦人科業務が多忙となったため、研究計画に沿った研究実施が困難となった。このため、本研究の遂行のため、補助事業期間延長を申請した。本年度は一般産婦人科業務を整理し、研究遂行のために実験を行う時間を拡大する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでにマウス肉腫モデルを用いた先行研究において、RNA免疫沈降法(RIP assay)によりIMP3の標的となるRNAを検討している。その結果、いくつかのヒストン修飾に関わる分子のRNAがImp3の結合するmRNAの候補として考えられた。さらにヒト癌肉腫検体においてIMP3発現とヒストンメチル化修飾が関連することがこれまでの研究結果から強く示唆され、今後はレーザーマイクロダイセクションを用いてIMP3発現部と非発現部の網羅的アレイ解析を推進していく計画である。ヒト臨床検体を用いた研究であり、またレーザーマイクロダイセクションについては自施設での設備がなく外注を予定することとした。そのため、今後は検体評価を十分に行い適切な採取部位を確認した上での発現プロファイル解析が重要であると考え、病理専門医との連携は確保することができた。また、発現プロファイル解析については事前の計画通り、IPA解析などバイオインフォマティクスを駆使するとともに、バイオインフォマティシャンとの連携も自施設内で確保することができた。 すでにエピジェネティクス関連の遺伝子群がIMP3の標的分子である可能性の示唆を得ており、今後は特にこれら分子についても注目して解析を施行してゆく。この抽出作業を通じて、先行研究で明らかになったIMP3のin vivoにおける腫瘍原性の付与について、新たな知見が得られることが期待される。
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Causes of Carryover |
2016年4月に本務先を異動し、さらに所属研究機関を2016年9月に変更した。本務先業務多忙のために実験遂行も遅れ、このため必要な物品購入などの見積もりが遅れたため、補助事業期間延長を申請し平成29年度の購入費用に充てる計画としたため、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
子宮癌肉腫検体パラフィン切片からのRNA抽出、遺伝子プロファイルの比較を計画している。実際にはホルマリン固定・パラフィン包埋組織から、レーザーマイクロダイセクションによりIMP3発現陽性部および陰性部を分取し、micro RNAを含むtotal RNA抽出を行う。レーザーマイクロダイセクションおよび発現アレイ解析については外注を予定しており、研究費を充てる計画である。また、細胞株を用いたIMP3関連候補分子の過剰発現、ノックダウンによる形質変化の確認を行う計画の他、IMP3とエピジェネティック関連薬剤添加による発現制御の検討を予定しており、実験試薬などの消耗品費として研究費を充てる計画である。 さらには研究成果の報告のため、学会参加を含めた調査研究旅費、論文投稿のための準備費用を計上している。
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Research Products
(4 results)