2015 Fiscal Year Research-status Report
カニクイザルを用いた危機的産科出血に対する動脈塞栓術の基礎的研究
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15K20165
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Research Institution | St. Marianna University School of Medicine |
Principal Investigator |
五十嵐 豪 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 講師 (00386955)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 産科大量出血 / 動脈塞栓術 / NBCA / カニクイザル |
Outline of Annual Research Achievements |
2頭のメスのカニクイザルを用いて実験を行った。1頭目は2015年1月、2頭目は7月に実験を施行した。 1頭目の実験においては、子宮動脈の血管が細くカテーテルの挿入が困難であったことから、両側の内腸骨動脈をNBCAにて塞栓した。これまでの実験で、サルの尾に血流を供給している正中仙骨動脈がヒトよりも発達しており、内腸骨動脈以外からの子宮への血流供給の可能性があるため、この正中仙骨動脈も塞栓し、経過観察とした。術直後の造影CT検査では、明らかな子宮の造影効果を認めず、子宮への血流は遮断されたと考えられた。経時的に造影CT検査を行い子宮血流について評価を予定した。しかしこのサルは塞栓後2日で死亡した。おそらく原因はカテーテルのアプローチにに両側の大腿動脈を用いたため、術後に血流不全、下半身麻痺が発生したことである。 1頭目の実験結果から、左右の子宮動脈や内腸骨動脈を塞栓する場合には、解剖学的に左右の大腿動脈をカテーテルのアプローチに使用せざるおえなかった。このことを踏まえ、2頭目では、1か所でのアプローチで両側の塞栓が可能な頸動脈を用いてカテーテルのアプローチを行った。しかし、2頭目の両側子宮動脈も1頭目と同様に、血管径が細くカテーテルが入らず子宮動脈を選択的に塞栓することは不可能であった。このときもNBCAによる両側内腸骨を選択し塞栓した。引き続きNBCAにて正中仙骨動脈の塞栓を施行した。術後の造影CTでは、明らかな子宮の造影効果は認めず、塞栓による組織虚血がうかがえた。 術直後サルの状態は安定していたが、3日目になって死亡を確認した。下肢の麻痺または炎症が原因ではないかと考えられた。2頭のカニクイザルを用いて実験を行ったが、実験動物の死亡により十分な術後の経過観察が行われていない。改善策を検討し研究を継続する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
初年度は3頭のカニクイザルを使用する予定であったが、最初の1頭目でカテーテルが子宮動脈に入っていかないというトラブルがあった。カニクイザルの大きさや血管の太さには個体差が存在するため、実験のたび子宮動脈の塞栓が可能か判断しなければならない。 また、実験を行ったサルは2頭とも死亡した。以前に行った2頭のカニクイザルでは、1頭は片側の子宮動脈、2頭目は両側の内腸骨動脈のみ塞栓したが術後生存し経過を追うことができた。今年度から新たに行ったことは、子宮動脈骨盤内の血流を減少させることを目的とした正中仙骨動脈の塞栓であり、この血管のNBCAによる永久塞栓が個体死を招いた可能性がある。
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Strategy for Future Research Activity |
カニクイザルを用いてあと2頭、子宮動脈の塞栓を図る。個体差ゆえに塞栓できない場合には、内腸骨動脈から下流の血管すべてを塞栓し、子宮動脈を塞栓したこととみなし予定通り計画を進める。 その際、子宮動脈のみの塞栓が困難と判断後、先に金属コイルによる正中仙骨動脈を塞栓する。金属コイルを用いる理由は、NBCAによる正中仙骨動脈の完全塞栓とことなり骨盤内の血流を一時的に減少させ完全には閉塞させないためである。 ほかの方法として、カニクイザルではなくアカゲザルを用いることを検討している。アカゲザルはカニクイザルと比較して2回りほど大きいサルのため、子宮動脈の径も大きく塞栓しやすい。
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Causes of Carryover |
2頭のカニクイザルを実験に使用したところ、個体差もあるが子宮動脈の径が細くカテーテルを予定の位置まで進めることが困難であった。そこで2回り大きいアカゲザルに変更し実験を継続するつもりで入荷を待っていたため実験動物の購入費が余った。 また、実験に使用した2頭は実験から数日で死亡したために、予定していた塞栓後のCT検査などができなかったため検査費用、動物運搬費用が余った。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
アカゲザルの日本への入荷が困難であることが分かった。そのためカニクイザルでの実験を継続する。個体ごとに子宮動脈あるいは内腸骨動脈を塞栓するかその都度決定する。内腸骨動脈塞栓時には正中仙骨動脈も塞栓するが、下半身の血流不全、麻痺を回避するためにNBCAではなくコイルで塞栓し、血流の止めるのではなく減少させるようにして個体死亡を防ぐ努力を行う。
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