2016 Fiscal Year Research-status Report
カニクイザルを用いた危機的産科出血に対する動脈塞栓術の基礎的研究
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15K20165
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Research Institution | St. Marianna University School of Medicine |
Principal Investigator |
五十嵐 豪 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 講師 (00386955)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 産科大量出血 / 動脈塞栓術 / NBCA / カニクイザル |
Outline of Annual Research Achievements |
研究費によって次のような結果を得た。 カニクイザル(4歳)の片側子宮動脈を5倍希釈のNBCAを用いて塞栓を行った。直後の造影CT検査により、動脈相では塞栓側の子宮筋層に造影効果がみられなかったが、平衡相では造影効果を認め、塞栓直後であっても塞栓側の子宮筋層組織には他の血管から血流が確保され組織虚血を起こしにくいことが分かった。さらに、塞栓後6か月には動脈相でも造影効果を認め、摘出した子宮には壊死を認めなかったことから、NBCAによる片側子宮動脈の塞栓術では塞栓後に側副血行路が急速に発生し、組織壊死を起こしにくいことを明らかにした。 カニクイザル(4歳)の両側内腸骨動脈を5倍希釈のNBCAを用いて塞栓を行った。直後の造影CT検査では、動脈相から子宮への造影効果を認め、両側子宮動脈の塞栓では子宮組織虚血は起こしにくいことを明らかにした。また、塞栓1年後には血管造影検査により両側内腸骨動脈の再開通を確認した。 カニクイザルの骨盤内の解剖学的血管走行はほぼヒトと同じであったが、サルの尾の動脈はヒトでいう正中仙骨動脈から派生し、この動脈は太く骨盤内にも血流を送ることを発見した。そこで、正中仙骨動脈をコイルで塞栓することでこの血管からの骨盤内への血流を減弱し、ヒトの血行動態に近づけることができた。また、これまでカテーテルの穿刺を大腿動脈から行っていたが、術後下肢の血流不全が発生し2頭のサルが死亡していることから、穿刺部位を頸動脈に変更した。これらの 工夫を行い、塞栓後も下肢血流不全を起こさないカニクイザルの両側子宮動脈塞栓術モデルの作成に成功した。現在、この方法によりカニクイザル(4歳)両側子宮動脈を塞栓し血行動態について経時的に造影CT検査を施行し経過観察中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
使用した6頭のカニクイザルのうち、3頭目、4頭目が塞栓術後に感染または下肢の血行障害による虚血により死亡した。術後の経過観察が不可能であったことから計画は やや遅れている。しかし、放射線科医や獣医師と相談し改善可能であったことから、5頭目以降は問題なく実験が進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
NBCAによる両側子宮動脈塞栓術を施行したカニクイザルは2頭である。さらに頭数を増やし、造影CT検査による塞栓後の子宮血流のと組織学的評価及び、卵巣内の卵胞数も確認を行う。
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Causes of Carryover |
カニクイザルの骨盤内の解剖学的血管走行はほぼヒトと同じであったが、サルの尾の動脈はヒトでいう正中仙骨動脈から派生し、この動脈は太く骨盤内にも血流を送ることを発見した。そこで、正中仙骨動脈をコイルで塞栓することでこの血管からの骨盤内への血流を減弱し、ヒトの血行動態に近づけることができた。また、これまでカテーテルの穿刺を大腿動脈から行っていたが、術後下肢の血流不全が発生し2頭のサルが死亡していることから、穿刺部位を頸動脈に変更した。これらの工夫を行い、塞栓後も下肢血流不全を起こさないカニクイザルの両側子宮動脈塞栓術モデルの作成に成功した。上記実験計画を考案するにあたり、一旦実験を中止せざるを得なかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
再度カニクイザルを購入し、新しい両側子宮動脈塞栓術モデルの作成を継続する。
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