2015 Fiscal Year Research-status Report
TS細胞を用いた、β-cateninの胎盤形成に果たす役割に関する研究
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15K20171
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Research Institution | National Center for Child Health and Development |
Principal Investigator |
上條 慎太郎 国立研究開発法人国立成育医療研究センター, その他部局等, 研究員 (70570878)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 幹細胞 / 妊娠 / 着床 / 胎盤 / 腫瘍 / 分化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究においては、マウス栄養膜幹(TS)細胞を用いて、ヒトおよびマウスに共通して重要な役割を果たしていると考えられるβ-cateninの、胎盤組織への細胞分化と胎生期発生における役割を分析した。β-cateninは1991年にMcCreaらによって発見されたWnt主経路を担う重要な分子である。マウスとヒトで同等の遺伝子発現パターンは27%しか保存されていないが、Wnt経路はその内の一つであり、かつ、5つしか保存されていないシグナル伝達経路のうちのひとつである。この研究によって胎盤形成・妊娠維持管理に関わる胎盤での細胞シグナルのプロセスが解明されれば、流早産や妊娠高血圧症候群、子宮内発育遅延などの胎盤疾患についてその予防と治療への端緒となり、今後さらに重要性を増す産科医療・生殖医療の前進に貢献できる。胎盤の発生は妊娠合併症や絨毛性疾患と密接に関わっており、例えば近年増加傾向にある妊娠高血圧症候群(かつての妊娠中毒症)は胎盤形成不全と血管内皮障害と深く関わっていることが報告されている。また流早産の原因の一つとしての胞状奇胎や絨毛癌などの絨毛性疾患も染色体異常に起因する胎盤の発生異常によるものである。これらの病態について、これまでは妊娠合併症の発症に対して胎盤組織を精査することによって後方視的に研究するのみであったが、TS細胞を用いることでその発症機構について前方視的な研究をすることが可能となる。本年度はβカテニンノックアウトマウスより得られた胚盤胞から栄養膜幹細胞様の細胞を樹立することに成功した。当該細胞は通常のTS細胞とは異なる形態・増殖能を有しており、遺伝子発現についてもTS細胞とも胚性幹細胞とも異なっており、今後その細胞の特性解析を進めていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の想定以上にノックアウトTS細胞の樹立が困難であったため検体を得るのに予定以上に時間を要したが、現在は複数の検体が得られている。樹立率は既報での野生型の樹立率である5%程度よりも低く0.8%であった。樹立された細胞は栄養膜幹細胞様の形態を持っているが、その発現遺伝子をリアルタイム逆転舎PCRで解析したところ、通常の栄養膜幹細胞とも胚性幹細胞とも異なる遺伝子発現パターンを示していた。
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Strategy for Future Research Activity |
樹立された細胞の特性解析をするため、網羅的遺伝子解析、分化誘導実験、キメラ作成実験などを勧めるとともに、βカテニンレスキュー実験も行い、βカテニンの機能を解析する。
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Causes of Carryover |
試薬の納品が年度内に間に合わなかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
残金分は消耗品費として使用する。
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