2016 Fiscal Year Research-status Report
好酸球性副鼻腔炎における局所IgE産生のメカニズムと病態生理への関与の解析
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15K20187
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
馬場 信太郎 東京大学, 医学部附属病院, 届出診療医 (90553719)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 慢性副鼻腔炎 / 好酸球 / マスト細胞 / IgE |
Outline of Annual Research Achievements |
好酸球性副鼻腔炎は鼻茸の再発を高率に認める難治性の副鼻腔炎である。その病態生理は依然不明な点が多いが局所におけるIgEの過剰産生とIgEにより活性化されたMast cellが病態の形成に関与することが近年示唆されている。 ヒトのMast cellはTryptase(T)のみをもつMCTとTryptaseとChymase(C)をもつMC TCとに分類されている。両者は各組織に混在しているが、粘膜表層にはMCTが粘膜深層や皮膚、血管、結合組織にはMCTCが多いとされている。今回我々はポリープ局所でのMast cellの分布について、慢性副鼻腔炎を好酸球性、非好酸球性の2群に分けコントロールと比較、検討すると共にMast cellのIgE分布についても検討した。各群鼻粘膜のパラフィン切片を作成し、切片に抗IgE抗体、Mast cell tryptase、Mast cell chymaseの各免疫組織染色を行った。MCT、MCTCの割合、Mast cell中のIgE陽性細胞の割合を検討するため蛍光2重染色を行った。また、各ポリープ組織からRNAを抽出し、定量PCRにてMast cell tryptase、Mast cell chymaseのmRNA発現量を検討した。 好酸球性副鼻腔炎群ポリープにおいてmRNAレベルでChymaseはコントロールと有意差ないが、Tryptaseはコントロールより発現上昇していた。免疫染色の所見では好酸球性副鼻腔炎群ポリープではMCTの増多、非好酸球性副鼻腔炎群ポリープではMCTCの増多を認めた。好酸球性副鼻腔炎群ポリープではMCTの上皮内、腺組織内への浸潤が著明であり、浸潤したMCTの大部分がIgE陽性であった。好酸球性副鼻腔炎の病態形成にIgEとMCTが関わっていることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
好酸球性副鼻腔炎におけるマスト細胞とIgEの役割を上記のように検討し、日本耳鼻咽喉科免疫アレルギー学会、日本アレルギー学会で発表をした。
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Strategy for Future Research Activity |
好酸球性副鼻腔炎ポリープよりフローサイトメトリーで分離したマスト細胞をさらにMCT、MCTCに分離し、それぞれのIgEレセプター(FcεR1,2)やIL-4レセプターの発現の違いを検討し、それぞれのマスト細胞のsubtypeの役割を検討する。 次に患者より手術時に採取された鼻汁、鼻ポリープおよび下鼻甲介粘膜より、各種特異的IgEを検出し、本疾患のIgE増多のトリガーとなるアレルゲン等を同定する。また、従来の細菌培養に加え、PCRやin situ hybridizationを用いてポリープ中の細菌の解析を行う。好酸球性群、非好酸球性群と比較することで両者の違いがより明確となると考えられる。
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Causes of Carryover |
2016年に東京大学耳鼻咽喉科研究室が移転したため、引っ越し準備のため研究がすすめられなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
研究室の移転が完了したため2017年より研究を再開、引き続き物品購入、論文投稿費、学会参加のための旅費等に使用予定である。
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