2015 Fiscal Year Research-status Report
低侵襲人工内耳手術が前庭機能に及ぼす影響に関する研究
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15K20198
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
塚田 景大 信州大学, 学術研究院医学系(医学部附属病院), 助教 (90419375)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 人工内耳 / 平衡機能 / VEMP |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度は、人工内耳手術症例の術前後の平衡機能の評価を行うことにより内耳保護のための手術方法や電極が末梢前庭器の保護のとなりうるかを評価、検討を行った。特に今年度は、人工内耳適応症例に対してocular VEMP(o-VEMP)を用いて検討を行った。oVEMPは主に卵形嚢機能を反映すると考えられ、近年、臨床検査として応用されてきている。過去に我々は、人工内耳症例における術前後の温度眼振検査およびcervical VEMP (c-VEMP)による、術前後の前庭機能について検討し、蝸牛に低侵襲な電極および術式が術後の前庭機能低下を防ぐことが可能であることを報告してきた(Tsukada et al. 2013)。しかし、人工内耳症例における卵形嚢の術前後の変化を検討している報告はなく、人工内耳手術における卵形嚢機能を評価することは人工内耳に関わる手術において非常に重要であると考えられる。そのため今年度は、人工内耳の適応となる重度難聴患者あるいは高音急墜型感音難聴症例における術前後のo-VEMPを評価し、人工内耳手術症例における卵形嚢機能を評価した。対象は、人工内耳適応症例の術前後にoVEMPを比較できた9例について検討した。o-VEMPはmini-Shekerを用いた骨導刺激を用い、術前および人工内耳手術後1か月以上経過した後の振幅(n10-p15)の変化を検討した。術前のo-VEMPを検討したところ、9例中6例は両側で反応を認め、残りの3例は両側とも無反応であった。術前に反応を認めた6例について術前後のn10-p15の振幅を比較したところ、検討した6例全例で人工内耳側において明らかな低下を示した症例は認めなかった。人工内耳手術における低侵襲手術は、卵形嚢機能に関して術後機能を保存できる可能性が考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画どおりに人工内耳症例の平衡機能解析を実施できている
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Strategy for Future Research Activity |
前年度までの研究を継続して行うとともに、人工内耳症例を対象に、半規管機能としてカロリック検査、vHIT、球形嚢検査としてcVEMP、卵形嚢検査としてoVEMP、体平衡検査としてイクイテストを行い、術前および術後に平衡機能検査を行う。また、人工内耳手術後にも同様の検査を行い、平衡機能に及ぼす影響に関して総合的に検討を行う。 また、人工内耳装用症例を対象に難聴の遺伝子解析を実施し難聴の原因を明らかにするとともに、難聴の原因の種類ごとに半規管機能、球形嚢機能、卵形嚢機能との間の相違について詳細に検討を行い、めまい症状の特徴およびメカニズムについて検証を行う。
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