2015 Fiscal Year Research-status Report
網羅的タンパク解析によるヒトパピローマウイルス陽性中咽頭癌の治療抵抗性因子の同定
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15K20202
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
武本 憲彦 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (20636485)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 放射線抵抗因子 / プロテオーム解析 / ヒトパピローマウイルス |
Outline of Annual Research Achievements |
HPV陽性中咽頭癌未治療新鮮(F0)検体とそれらから樹立したマウス移植(F1)検体を3ペアを用いてiTRAQ法によるプロテオーム解析を行った結果、Heterogeneous nuclear ribonucleoprotein、DNA replication licensing factor MCM4などの分裂増殖に関与する核内蛋白が3ペアに共通して増加しているのが分かったが、膜蛋白およびsignal pathwayに関与する細胞質内蛋白に関しては共通して発現増加するものが得られなかった。 今回の検討では2倍以上発現増加が確認された蛋白数は各ペアで661種類、57種類、24種類とペア間での差異が顕著であり、組織におけるheterogeneityが起因しており正確な共通発現因子を検出することが困難と考えられた。これらの問題点を打破すべく、F0F1で変化する因子は放射線抵抗性細胞株と野生株でも共通して発現変化しうると考え、細胞株をニュートラルサンプルとして加えてさらにペア数を増やして検討を行うつもりである。 F0およびF1検体は現在までにすでに新しく2ペア樹立できている。 またニュートラルサンプルとして使用するため、UMSCC47、UMSCC104(HPV陽性中咽頭癌細胞株)を用いて放射線照射に抵抗し増殖しうる放射線耐性株を樹立した。総線量60Gy照射したが、UMSCC104に関してはほぼ死滅し耐性株の樹立ができなかったが、UMSCC47に関しては野生株と比較して放射線照射後の生存率が有意に高い細胞株を樹立できた。UMSCC104の代替として同じくHPV陽性中咽頭癌細胞株であるUPCI090をDr.Alice L Tangより入手し、現在培養中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
予想以上にマウス移植して生着する検体が少ない。またF0検体のボリュームが少なく、1度のiTRAQ法ですべて使用してしまうので、再度の実験まで時間がかかってしまう。 放射線耐性株樹立に関しては、非常に放射線感受性が強い細胞株を使用しており、過去の文献報告を参考に規定した放射線照射量で生存するクローンが少ないため、照射線量と照射タイミングの変更を適宜行わないといけなかったので樹立まで時間がかかった。
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Strategy for Future Research Activity |
HPV陽性中咽頭癌細胞株UMSCC47の放射線耐性株と野生株をニュートラルサンプルにおき、HPV陽性中咽頭癌未治療新鮮(F0)検体とそれらから樹立したマウス移植(F1)検体をさらに3ペア以上用いてプロテオーム解析を行う。プロテオーム解析での結果とともにマイクロアレイを用いてmRNAレベルでの発現変化も検出し、それぞれの解析の結果の整合性を検討する。またUPCISCC090の放射線耐性株も樹立し、ニュートラルサンプルとして使用する予定である。 平行して、他癌腫で報告のある放射線抵抗因子であるEGFR-PI3KCA-mTOR pathway,p53 pathway,Ras pathwayでの変化をUMSCC47およびUPCI090放射線耐性株を用いてウェスタンブロットやリアルタイムPCRを用いて解析していく。 上記Omics解析で得られた結果と放射線耐性株で得られたpathway解析の結果を照合し共通する因子が検出しない場合でも新規放射線抵抗因子として考えられる。 いずれにしても検出された分子を細胞株でノックダウンしphenotype解析を行い、また放射線単独療法で加療したHPV 陽性中咽頭進行癌のホルマリン固定パラフィン包埋生検標本を 対象として免疫組織化学染色を行う。
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Causes of Carryover |
平成27年度に行ったプロテオーム解析ではサンプル量が乏しく1度しか行えなかった。また新たな追加サンプルが調達できるまで予想以上に時間を要してしまい、その後に行うつもりであった解析ができなかったため、未使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
得られにくいマウス移植サンプルだけではなくニュートラルサンプルとして細胞株を使用し解析を行っていく。またマイクロアレイ解析を行い、mRNAレベルでの解析も行うこととし未使用額はその経費に充てたい。
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