2015 Fiscal Year Research-status Report
腸内マイクロバイオームによるTfh細胞サブセット制御機構と免疫アレルギー病態
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15K20214
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Research Institution | Sapporo Medical University |
Principal Investigator |
川田 耕司 札幌医科大学, 医学部, 助教 (20374572)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 濾胞ヘルパーT細胞 / 腸内細菌叢 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、バンコマイシンおよびポリミキシンBを4週間長期飲水投与したマウスを用い、各種リンパ組織より分離したリンパ球について、フローサイトメトリーを用いた解析を実施した。その結果、パイエル板における細胞の構成比には変化が認められなかったが、脾臓及び末梢血における濾胞ヘルパーT(Tfh)細胞(CD4+、PD-1+、CXCR5+)の割合が抗生物質投与群で有意に増加していた。また、当該マウスに対するヒツジ赤血球(SRBC)を用いた抗原刺激の結果、刺激後7日でのTfh細胞の割合には、コントロール、投与群で有意な差は認めなかったが、刺激後21日での末梢血中Tfh細胞の割合が抗生物質投与群で有意に減少していることが明らかとなった。この結果は、腸内細菌叢の構成変化がTfh細胞の分化段階よりも当該細胞分化後の維持、生存に強く影響を及ぼしている可能性を示唆している。 腸内細菌叢とヘルパーT細胞サブセットとの関連は、これまでに、クロストリジウム属細菌によるTregの誘導、segmented filamentous bacteria(SFB)によるTh17の誘導等が報告されているが、Tfh細胞に関する報告は非常に限られている。Tfh細胞は、抗原特異的抗体の産生に重要な働きを示す他、他のヘルパーT細胞への分化の遷移細胞として免疫システム全体を制御していると考えられており、本細胞の量的、質的変動はアレルギーや自己免疫疾患の病態形成における主要なメカニズムの一つと考えられる。腸内細菌叢の構成変化による自己免疫性疾患の修飾についてはこれまで多くの報告があるが、本研究で得られた結果は、これらの作用の具体的な作用点について重要な知見となると考えられる。今後は具体的なメカニズムの解明に向け、腸内細菌叢のサイトカイン環境への影響等を検討する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究によって得られた結果は、腸内細菌叢の構成変化が脾臓及び末梢血中Tfh細胞の割合に影響を及ぼしていることを示唆するものである。腸内細菌叢とTfh細胞の関連に関する報告は現時点で、非常に限られており、本研究結果は非常に独自性の高いものと思われる。当初の計画での解析対象は、脾臓、リンパ節、パイエル板等のリンパ組織であったが、計画を変更し、末梢血中リンパ球についても解析を実施した。マウス末梢血中Tfh様細胞は解析例が少なく、機能的役割について不明な点が多いため、本研究結果の新規性、今後の展開可能性は高いと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、引き続きマウスを用いた実験を計画している。腸内細菌叢の構成変化によるサイトカイン環境への影響を、抗体アレイ等の網羅的手法を用いて解析し、Tfh細胞の数的変化のメカニズムについて検討する予定である。また、本研究で変動が認められたマウス末梢血中Tfh様細胞について、さらに検討を行う必要が生じたため、腸内細菌叢との関連が報告されている実験的自己免疫性脳脊髄炎など自己免疫性疾患モデルにおける当該細胞の挙動についても検討する予定である。
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