2015 Fiscal Year Research-status Report
持続的な成長因子シグナリングを可能にする人工気管の開発
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15K20215
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Research Institution | Fukushima Medical University |
Principal Investigator |
中村 亮介 福島県立医科大学, 医学部, 研究員 (40736708)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 気管 / ヘパリン / FGF-2 / 再生 / 線毛 |
Outline of Annual Research Achievements |
コラーゲンスポンジにヘパリンを結合させることで、FGF-2保持性が高まることをFGF-2に対する免疫染色およびELISAにより確認した。 コラーゲンスポンジあるいはヘパリンを結合させたコラーゲンスポンジにFGF-2を保持させた後、それらのスポンジ内でラット由来線維芽細胞を培養したところ、ヘパリンを結合させたコラーゲンスポンジでは細胞増殖が促進された。また、ヘパリンを結合させたコラーゲンスポンジを用いた気管上皮および間葉系細胞の共培養系において、通常のコラーゲンスポンジを用いた場合に比べて気管上皮細胞の分化が促進されることが確認された。 ヘパリンを結合させたコラーゲンスポンジおよび通常のコラーゲンスポンジにFGF-2を含有させ、ラットの気管欠損領域に移植したところ、スポンジへの間葉系および気管上皮細胞の遊走は前者のほうが早く、線毛細胞への分化も前者で促進されていた。形成された線毛は運動能を有し、正常気管上皮に比べて弱いものの、気管内腔面の異物を輸送する能力を有していた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ヘパリンを用いることで、コラーゲンスポンジのFGF-2保持性を高めることに成功した。さらに、ヘパリンとFGF-2を含有させたコラーゲンスポンジによって間葉系細胞の増殖や気管上皮細胞の分化が促進されることも示すことができた。さらに、同スポンジを用いることで、単にFGF-2を含有させただけのコラーゲンスポンジに比べて生体内での気管上皮再生を促進できることも確認された。動物実験によりvivoでの再生促進作用まで調べることができたと言う点では当初の予定よりも進んでいる。ただし、FGF-2シグナリングがどの程度の期間持続するかまでは十分に評価できておらず、引き続き検討していく必要がある。シグナリングの持続性を調べる上では、シグナリングにより活性型となる複数種のタンパク質を検出するための抗体を用意する必要があり、また、各タンパク質について検出に適した実験条件の検討を進めなければいけないが、最適な抗体および実験条件が見つかっていないタンパク質もある。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度において十分に評価できなかったFGF-2シグナリングの持続性に関して、細胞培養および動物実験により更に評価していく。 ウサギなど、ラットよりも大きい動物を用いて大型の気管欠損を作製し、ヘパリンを結合させたコラーゲンスポンジの再生促進作用を調べる。
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Causes of Carryover |
ヘパリンおよびFGF-2を含有するコラーゲンスポンジが培養線維芽細胞の増殖や培養気管上皮細胞の分化を促進すること、およびラット気管欠損領域における気管上皮再生を促進することを示すデータが速やかに得られたため、これらの実験にかかった費用は当初の予定を下回った。 シグナリングを調べる上で必要な試薬、抗体等について、本研究の実験に適したものであるかを一つ一つ検討していく過程に時間がかかった。それらの試薬および抗体等は、検討のため少量ずつ購入していたため、現段階ではあまり費用がかかっていない。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
シグナリングの評価に必要な試薬及び抗体の購入に使用する予定である。その際、本研究の実験に適すると予想される物品を複数種まとめて購入することで、本研究の実験系に適するか否かを速やかに評価する。実験に適した試薬および抗体の検討が済んだ段階で、適当と判断された試薬及び抗体を大容量で購入し、シグナリングの評価を本格始動させる。
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