2015 Fiscal Year Research-status Report
気管欠損モデルにおけるiPS細胞を用いた組織再生研究
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15K20216
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Research Institution | Fukushima Medical University |
Principal Investigator |
池田 雅一 福島県立医科大学, 医学部, 助手 (40707486)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | iPS細胞 / 気管上皮 / 再生医療 |
Outline of Annual Research Achievements |
本講座では再生誘導型人工気管の技術を用い、気管再生に有用な移植材料の実用化に向けて研究を行う。人工気管を移植した際に内腔面の上皮化が実用化において課題とされており、これまで研究をおこなってきた。大槻らはマウスiPS細胞を分化誘導し線毛上皮組織の再生に成功している。今回我々はiPS細胞から分化させた気管上皮組織を用いて、免疫不全ラットにてin vivoでの気管上皮様組織再生研究を目的としている。 分化誘導は大槻らの報告に順じて行う。マウスiPS細胞を1000/welの細胞数で浮遊培養し胚様体を形成する。次にその後増殖因子acvitin A(10ng/ml),b-FGF(10ng/ml)を添加し、5日間接着培養する。続いてair-liquid interface(以下ALI)を用いて維持培養を継続する。維持培養中の胚様体の上皮様組織への分化を経時的(7,14,21,28days)に組織学的、遺伝子的に評価する。これにより移植に適したタイミングを明らかにする。移植する人工気管にはコラーゲンゲルを塗布し、ゲル内に胚様体を包埋させる。 免疫不全ラット(F344/NJcl rnu/rnu)に気管欠損部を作成する。胚様体包埋モデル、controlモデルともに観察期間(移植後7日)ののちに摘出する。気管再建部位の組織学的変化をパラフィン切片にて各種染色(HE染色,免疫染色等)を行い、controlモデルと比較し評価する。 気管上皮細胞を分化誘導する段階でALIの有用性を確認する目的で、ALIを用いない培養法と、非接着プレートを用いた浮遊培養法で培養された胚様体について組織学的に差異を検討する。 ヒトiPS細胞の維持培養を開始する。維持培養されているヒトiPS細胞が多分化能を有していることを確認する目的で免疫不全マウスに移植する。iPS細胞が3胚葉成分を有する奇形腫を形成していることを確認する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
移植する胚様体の評価は5日間の成長因子含有培地での培養を行った後に、ALIの環境下で7日、14日、21日、28日の維持培養を行った。5日間の成長因子含有培地での培養期間も含めて培養日数12日、19日26日、33日目の胚様体を組織学的に評価した。26日培養以降の胚様体中に線毛様構造を有した上皮組織が形成された。日培養26日間培養した胚様体を評価の対象とした。蛍光免疫染色では、線毛様構造にはβtubulinIVの発現を認め、上皮細胞間にtight junctionのマーカーであるZO-1の発現を認めた。また、iPS細胞、胚様体形成時、胚様体培養5日目、胚様体培養26日目のそれぞれの状態において、real time-PCRで遺伝子的に評価した。線毛上皮マーカーであるβtubulinIVとFoxj1の継時的上昇、未分化マーカーであるnanog、GFPの継時的減少が確認できた。 26日間培養した胚様体を移植することとしコラーゲンI型ゲルを人工材料の内腔面に塗布し、胚様体はゲル内に包埋した。一つの人工材料あたり、12個の胚様体を包埋した。これをALIモデルとした。対称は培養5日間の胚様体を移植したwithout ALIモデル、胚様体を移植しないcontrolモデルとした。ヌードラットの気管欠損モデルを作成し、人工材料を移植した。7日後に摘出し、組織学的に評価した。ALIモデルで気管上皮組織の生着が確認できた。
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Strategy for Future Research Activity |
iPS細胞から分化誘導した気管上皮組織が、in vivoの実験において生着していることを確認できた。iPS細胞由来の組織とrecipient(ヌードラット)由来組織を識別するために、蛍光タンパクを遺伝子導入したiPS細胞を用いて同様の実験系を行う必要がある。気管上皮組織への分化効率を上昇させるための工夫を検討する。
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Causes of Carryover |
実験を進めていくにあたって、再実験が必要になる可能性を考慮して、可能な限り節約して実験を進めていた。しかし比較的スムーズに研究が進んだため、繰越額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
H28年度の実験にかかる費用だけではなく、論文投稿費用や研究結果発表のための交通費などに使用される予定がある。
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