2015 Fiscal Year Research-status Report
咽喉頭電気刺激による嚥下および呼吸中枢の協調性の改善に関する研究
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15K20220
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Research Institution | Kyoto Prefectural University of Medicine |
Principal Investigator |
杉山 庸一郎 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (50629566)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 喉頭科学 / 嚥下 |
Outline of Annual Research Achievements |
通常嚥下に関与する筋群の多くは呼吸性活動を呈している。そして一旦嚥下が惹起されると、安静時呼吸のリズムが劇的に変化し、パターン化された嚥下活動を行う。このパターン化された嚥下生成を行う中枢は脳幹に存在する。そして嚥下生成神経ネットワークが呼吸中枢に影響を与える、あるいは呼吸中枢自体が嚥下のための準備をしたり、嚥下制御自体に貢献することで嚥下が正しく行われることが予想される。このように嚥下と呼吸が正確に制御されることで誤嚥を防ぐことが出来るのであるが、この嚥下と呼吸の協調性の成因を探るには呼吸中枢の嚥下における制御機構を検討する必要がある。従ってどの領域の呼吸ニューロンがその相互関係に重要かを解明するために、呼吸中枢の嚥下時活動解析を行った。我々は以前の研究で呼吸中枢の嚥下時解析を行い、嚥下時の延髄腹側呼吸ニューロン群の活動変化を解析した。そこで、そのより吻側に存在する傍顔面神経核呼吸ニューロン群における嚥下時活動解析を行った。その結果、傍顔面神経核呼吸ニューロン群の様々な呼吸ニューロンはそれぞれのタイプ毎に嚥下時に特徴的な活動性変化を生じ、嚥下活動制御に影響を与えていることが示された。この結果により、延髄の多くの呼吸ニューロンは何らかの形で嚥下生成および制御に関与していると考えられた。また、傍顔面神経核呼吸ニューロン群の尾側レベルで脳幹を切断しても嚥下反射が生じることから、この領域は嚥下活動の制御に何らかの関与を示す可能性はあるが、嚥下リズム生成自体への関与は乏しいことも示唆される結果となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
嚥下と呼吸の協調性について検討するために、呼吸中枢の嚥下への関与を検討した。そこで、呼吸中枢のなかで、呼気調節に重要な領域である傍顔面神経核呼吸ニューロン群に注目し、その嚥下生成および制御への関与を検討した。この研究により延髄呼吸中枢の嚥下制御機構の一端が解明されることとなり、呼吸神経ネットワークの機能の一端が明らかになった。呼吸中枢における嚥下の制御様式の全貌が解明されたわけではないので、嚥下と呼吸の相互関係に最も重要な役割を担っている領域の特定には至っていないが、傍顔面神経核呼吸ニューロン群より尾側の領域で嚥下リズム生成が行われている可能性は示唆された。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は嚥下と呼吸の相互制御メカニズムの解明をめざし、呼吸中枢の嚥下時活動解析を継続する。また、その後に咽頭電気刺激による嚥下時呼吸関連ニューロンや嚥下関連ニューロンの活動性の解析を予定している。しかし、呼吸中枢や嚥下中枢に咽頭電気刺激がどのように関わるのかを検討するためには、実際の咽頭電気刺激がどのように脳幹にインプットされ、嚥下惹起や呼吸リズムの変動に寄与するのかを検討する必要がある。従って、咽頭電気刺激による呼吸と嚥下の協調性の解析を行うために、咽頭電気刺激による嚥下惹起メカニズム解析も並行して行う。
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Causes of Carryover |
嚥下と呼吸の協調性に重要な呼吸中枢の領域特定の検討のために、本年度は延髄呼吸ニューロン群の嚥下時活動解析を行った。次年度にも初年度に引き続き呼吸中枢の嚥下時活動解析を行う予定である。本年度購入した物品は本年度施行した研究に使用したが、予定していた物品のうち一部は次年度に引き継いだ呼吸中枢の嚥下時活動解析に使用する物品購入の予算としたために残額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本年度使用予定であった残額を呼吸ニューロンの嚥下関連活動解析のための物品費として使用する。次年度請求予定額については次年度計画に沿って必要物品購入に当てる。
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