2016 Fiscal Year Research-status Report
騒音環境下でも利用可能な軟骨伝導補聴器の実用化研究
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15K20221
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
下倉 良太 島根大学, 総合理工学研究科, 助教 (90455428)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 実験系心理学 / 解析・評価 / 電子デバイス・機器 / 医療・福祉 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、騒音下でも利用できる軟骨伝導補聴器の開発を目的としている。軟骨伝導補聴器とは耳軟骨を振動させて音情報を伝える新しい補聴器である。この補聴器は、これまでの気導・骨導とは異なる新しい伝導ルート(軟骨伝導)を利用したものであり、既存補聴器のデメリットを解消しうる画期的な補聴器として期待できる。この補聴器の大きな特徴は、外耳道を開放したまま音聴取が可能な点である。一般的な気導補聴器はイヤホンを外耳道に挿入する必要があるが、軟骨伝導補聴器は耳軟骨に軽く接触するだけで音聴取が可能なので、リング状の振動子を採用すると、外耳道を開放したままで装用が可能である。その反面、外部騒音が外耳道に混入しやすく、騒音環境に弱いという指摘を受ける。 初年度(平成27年度)は、騒音が入ることによってどの程度語音明瞭度が低下するのか、聴取実験を行った。その結果、騒音下においては特に高音域にエネルギーのある子音が聞き取りづらいことが明らかになった。そこで平成28年度は、一般的な難聴者がどういった子音を聞き取りづらいと感じているのか、自己相関解析を用いて評価した。自己相関解析とはパターンマッチングなどに用いられる解析手法の一つで、我々の聴神経でも同様の解析が行われている。解析の結果、自己相関関数から得られる有効継続時間が短い語音ほど、難聴者にとっては聞き取りにくいことが明らかとなった。言い換えれば、語音に含まれる周期性(純音成分)が曖昧であるほど聞き取りづらい。よって騒音下の語音弁別においても、この有効継続時間を計算しながら、装用者の明瞭度について検討していく必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
難聴者にとって聞き取りづらい語音が判明し、次年度への課題が明らかとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度の研究成果により、難聴者にとって聞き取りづらい語音が明らかになり、それを軟骨伝導補聴器で伝えるためには、①高音域の出力の強化、②語音に含まれる周期性の安定化、といった軟骨伝導振動子の改良点が明確となった。今年度はこれら課題を克服するための、デバイス開発、信号処理等の検討を行っていく。
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Causes of Carryover |
振動子による耳軟骨の振動を計測する加速度ピックアップと付随するシステムが当初の想定よりも安価に購入出来たため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
研究成果還元のため国際会議での研究発表を行う。
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