2015 Fiscal Year Research-status Report
最長寿国日本における老人性喉頭のリスク因子解明および治療に関する研究
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15K20224
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
甲能 武幸 慶應義塾大学, 医学部, 助教 (90573410)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 老人性喉頭 / 粘膜固有層 / 声帯 / 音響分析 / 萎縮 / 霊長類 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は声帯の加齢性変化に伴う機能的・器質的変化の実情を把握し、効果的な治療介入を臨床で行うための基盤研究が目的である。 平成27年度は、老人性喉頭例に関する臨床研究を中心に、種々の音声・喉頭機能検査やコンビームCT等を用いた構造評価を行い、健常老人および他疾患治療後の音声と比較することで、疾患の特徴を検証した。 本研究に先立ち行った他疾患(声門癌、前癌病変、喉頭乳頭腫)治療後の音声機能評価に関しては、それぞれ学会報告の上で英語論文化した。 本疾患は声帯粘膜固有層の菲薄化、筋層の萎縮性変化に伴い、音響分析では雑音成分、揺らぎ成分が健常老人と比較し有意に悪化を認め、声門閉鎖不全を象徴し空気力学的検査でも有意に悪化を認めた。一方、当施設で積極的に行っている声帯内コラーゲン注入術の治療効果は、声帯筋層の質量変化による空気力学的検査の改善は認めたものの、音響に関しては効果乏しく、声に関する自覚的QOLは限局的な改善を認めるのみで、他疾患治療後と比較しても悪かった。上記結果は国際学会で報告したが、対象となった新規患者が当初の想定より少なかったことから、病態リスク因子解析では統計学的に有意な結果が得られず、英語論文化できていない。 新たなる治療介入としては、音響の改善を目的とし、声帯粘膜固有層の菲薄化に対するアプローチが必要と考えており、当初はラットを用いた基礎実験系の確立を検討していたが、ヒト成人との声帯層構造の相違から、臨床応用に支障をきたす可能性が懸念された。そこで、よりヒトに近い霊長類(コモンマーモセット)の喉頭構造の解析を行う事から開始したため、当初の計画より遅れが生じている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
新規対象症例が想定数よりも少なかったためリスク因子解析が遅れている。 また、基礎実験系の確立においては、コモンマーモセットの喉頭構造の解析を行う事から開始したため、遅れが生じている。
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Strategy for Future Research Activity |
①症例数を増やして、臨床統計から病態のリスク因子を解明していく ②出生直後から高齢期までのマーモセット喉頭サンプルを採取し、加齢に伴う喉頭の構造変化を評価したうえで介入実験を計画することになる見込みである。
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Causes of Carryover |
本研究は、臨床研究と基礎研究を組み合わせて行っている。未使用額の発生は効率的な物品調達を行った結果であるが、研究の進捗状況に遅れも生じているので、次年度にずれ込む予定である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
28年度は動物実験(コモンマーモセットなど)を中心に解析をすすめていく予定であり、動物の調達にかかる費用、染色用の試薬等を中心に物品費が増えるほか、臨床研究を総括する論文校正や国際学会での発表にかかる費用が引き続き必要となる見込みである。
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