2015 Fiscal Year Research-status Report
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15K20233
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
高浪 太郎 東京大学, 医学部附属病院, 登録研究員 (20643670)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | MCMV感染マウス / ABR / ミオシン蛋白変性 / 内耳DDS |
Outline of Annual Research Achievements |
CMV難聴は小児難聴の約20%を占めるが、遅発性難聴の場合は新生児スクリーニングで見逃されたり、早期診断に至った場合でも抗CMV全身投与治療が骨髄抑制や重症感染症などの有害事象も報告されており、病態・診断・治療に難渋することが多い。福島県立医大微生物学教室では出生直後にMCMV脳室内注入を行い生後6週目時点で90%難聴を伴うMCMV難聴マウス作製に成功している。また生後4週目前後に外有毛細胞ミオシン蛋白変性が生じ不可逆的難聴を伴うとされる。今回、福島県立医大微生物学教室との共同研究にて抗CMV全身投与以外の治療法を模索し内耳DDSを用いた代替治療が可能かどうかの研究を行っている。生後1週目ないし3週目のMCMV感染マウスに抗CMV、ステロイド、免疫抑制剤を腹腔内ないし鼓室内投与し、生後6週目にABR評価することによって難聴予防効果があるかどうかの研究を行った。既に東京大学耳鼻咽喉科教室では抗CMV、ステロイドの正円窓投与による内耳毒性がないことを検証したが、生後1週目の抗CMV薬全身投与による両側難聴の改善、生後3週目のステロイド鼓室内注入による投与側難聴の著明な改善、対側難聴の軽度改善を認めた。難聴予防効果には全身のCMV活動性を低下させること、外有毛細胞ミオシン蛋白変性が生じる直前(可逆的時期)の鼓室内ステロイド治療の有効性が示唆された。また生後3週目の対側難聴の軽度改善は内耳血液関門が未熟である影響もありステロイド全身移行した可能性が示唆された。一方で生後3週目の抗CMV鼓室内注入は難聴改善には無効であり、免疫抑制剤鼓室内注入は致死率が上昇した。MCMV難聴マウスは生後2週目以降はラセン神経節・コルチ器からMCMV消失しており抗CMV鼓室内注入は難聴改善に寄与しない点、免疫抑制剤鼓室内投与が内耳血液関門脆弱による移行で易感染状態きたし病態悪化を生じることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
MCMV感染マウスの難聴予防効果として、生後1週目の抗CMV薬全身投与による両側難聴の改善、生後3週目のステロイド鼓室内注入による投与側難聴の著明な改善、対側難聴の軽度改善を認めた。難聴予防効果には全身のCMV活動性を低下させること、外有毛細胞ミオシン蛋白変性が生じる直前(可逆的時期)の鼓室内ステロイド治療の有効性が示唆された。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、抗CMV、ステロイド、免疫抑制剤を腹腔内ないし鼓室内投与した際の、生後6週目MCMV難聴マウスのABR評価を行っているが、今後MCMVの局在や外有毛細胞ミオシン蛋白変性の評価含めコルチ器全体さらにラセン神経節に関して、光学顕微鏡を用いた免疫組織学的な評価、さらには電子顕微鏡評価を加えていく方針である。また前年度は鼓室内ステロイドの試薬として水溶性デカドロンを使用したが、本年度はさらに選択的に内耳移行性の良い徐放製材ステロイドを用いて、内耳DDSを用いた手法で、CMV難聴治療成績の向上を図れるかを検証していく方針である
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Causes of Carryover |
福島県立医大との共同研究は順調に進んでいるが、今後免疫組織学的な評価を追加する計画で試薬含めた物品費が平成27年度以上より経費が必要となるため
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
現在のMCMV難聴マウスの難聴予防効果をABRで評価することができたが、今後免疫組織学的な評価を追加し、ミオシン蛋白変性を含めたコルチ器やらせん神経節に関して評価していく。光学顕微鏡だけでなく電子顕微鏡でも同様の免疫組織学的な評価を行っていく。
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