2015 Fiscal Year Research-status Report
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15K20234
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Research Institution | Nagoya Women's University |
Principal Investigator |
近藤 貴子 名古屋女子大学, 家政学部, 講師 (60737203)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 蝸牛神経 / IgSF |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、(1)蝸牛有毛細胞と脳幹の蝸牛神経核をつなぐ蝸牛神経の発達過程において、免疫グロブリンスーパーファミリー(Immunoglobulin superfamily (IgSF))の発現パターン、成長円錐における局在および相補的サブセットによる発現を、形態学的および生化学的手法により解明する。さらに、(2)RNA 干渉法を用いたsiRNA 導入実験系にて蝸牛神経のIgSFを阻害し、軸索伸展に及ぼす影響を検討することで、IgSF の蝸牛神経の回路形成の制御メカニズムを明らかにすることを目的とする。 平成27年度は、内耳の発達段階におけるIgSFのmRNA発現を定量解析するため、各週齢(E10~P5)のマウスの蝸牛からそれぞれtotalRNA を抽出し、Q-PCR(定量PCR)を行った。さらに、免疫組織化学染色法により、各週齢マウスのIgSF の発現パターンを、タンパク質レベルで確認した。頭部または内耳の切片を作製し、「蝸牛神経と有毛細胞」の接続部位を含んだ切片を多重染色した。神経系においてIgSF 分子群の軸索誘導およびシナプス形成の制御には同種親和型(同種のタンパク質同士が結合する性質)、異種親和型(異種のタンパク質同士が結合する性質)およびリガンド-受容体型などがあることより、IgSFが内耳の蝸牛部および前庭部の有毛細胞、蝸牛神経、支持細胞などのどこに局在しているかを確認し、同一細胞または同一成長円錐にIgSF の発現が重複しているかどうかを解析した。IgSFと蝸牛有毛細胞と蝸牛神経に発現するタンパク質とのタンパク質間相互作用を免疫沈降法により解析した。聴神経の軸索誘導に関与するNetrin とその受容体であるDSCAM が内耳において共発現していること、そしてそれらのタンパク質間相互作用が明らかにされた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
内耳の発達段階におけるIgSFmRNA発現の定量解析の結果より、タンパク質レベルで解析するためのステージを決定することができた。免疫組織化学染色法においては、ウェスタブロットにより抗体の質を確認しながら多重染色を行った。また、内耳の各細胞におけるマーカーを併用し、多重染色を行った。その結果、内耳におけるIgSF分子群の局在を明らかにすることができた。よって初年度で目標としていた解析結果をおおむね集積することができた。 内耳におけるIgSFのmRNA発現やタンパク質の発現パターンの解析により、28年度に優先して行う実験を検討することができ、蝸牛神経に高発現していたIgSFを軸にストライプアッセイを用いた軸索誘導のメカニズムの解析、ショ糖密度勾配遠心法を用いた成長円錐におけるIgSF 発現局在解析を優先して行う。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は、内耳におけるIgSFの発現パターンの解析結果と「IgSF 分子群が軸索ガイダンスキューとして胎児期の蝸牛神経の回路形成を制御する」という仮説に基づき、以下の解析を行う。 軸索誘導のメカニズムの解析: poly-D-lysine と IgSF 分子群またはNetrinのリコンビナントタンパク質をストライプ状にコートした上にマウスの蝸牛神経を播種し、ストライプアッセイを行う。軸索および神経終末を免疫染色し、同種親和型の軸索誘導が行われているかどうか解析する。蝸牛神経の細胞を完全に単離することは困難であり、神経軸索伸展アッセイやストライプアッセイでは一定数の細胞を播種することは難しい。これによってIgSF の機能が正しく測定できない場合は、タイムラプス顕微鏡を用いて軸索伸展を解析する。または、細胞をIgSF をノックダウンした蝸牛神経やIgSFを強制発現したPC-12などの神経細胞株を播種し、ストライプアッセイを行う。 成長円錐におけるIgSF 発現局在解析: マウスの蝸牛神経の成長円錐タンパク質を、ショ糖密度勾配遠心法を用いて精製する。IgSF 抗体を用い、成長円錐タンパク質における局在発現と成長円錐のマーカーとタンパク質間相互作用を解析する。
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Causes of Carryover |
成長円錐における発現解析を行う前に、内耳をもちいてタンパク質相互作用の確認を行ったのでショ糖密度勾配遠心法を28年度に行うことにした。よって次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
IgSFとタンパク質相互作用がみられたタンパク質を軸に精製した成長円錐での発現解析を行う予定である。よってこれらの実験に次年度使用額を使用する。
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