2015 Fiscal Year Research-status Report
中耳手術後の舌知覚障害と膝神経節におけるMAP kinaseの機能解析
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15K20235
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Research Institution | Hyogo Medical University |
Principal Investigator |
桂 弘和 兵庫医科大学, 医学部, 講師 (90533761)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 舌知覚障害 / 中耳手術 / 味覚障害 / 鼓索神経 |
Outline of Annual Research Achievements |
中耳手術で鼓索神経を損傷すると、術後患者は味覚障害や舌知覚鈍麻を訴えることがある。アブミ骨手術前後の味覚・知覚機能と、自覚症状の推移について検討した。当科でアブミ骨手術を施行した患者に術前後の味覚症状・しびれ症状の有無を聴取した。術前後にディスクリミネーター(R)を用いた2点識別閾検査、電気刺激装置(STG 4002(R),Multi Channel Systems, Germany)を用いた電気知覚検査、電気味覚検査(TR-06(R)、RION)を施行した。問診、検査施行時期は、術前、術後2週間以内、1か月後、3か月後、6か月後、1年後とした。患側の術前群と術後群、術後の健側群・患側群とでそれぞれの検査閾値を比較した。また、しびれの有無による術前後の検査閾値差についても検討した。術後2週間以内に、約50%に味覚症状としびれ症状を認めた。いずれも術後2週間以内に症状が出現した。味覚症状、しびれの両方を認めた例が40%、味覚症状のみが10%、しびれのみが15%、どちらも認めなかった例が35%であった。味覚症状、しびれ症状の有無を経時的に追跡した。味覚症状の消失時期は、1か月以内20%、3か月以内33.3%、6か月以内46.7%、1年以内60%であった。一方しびれ症状の消失時期は、1か月以内31.6%、3か月以内63.2%、6か月以内78.9%、1年以内89.5%であった。また、ラット鼓索神経切断モデルを作成し、膝神経節での温・冷覚、痛覚に関与するTRP受容体の発現変化と舌知覚鈍麻の関係について検討した。ナイーブラット膝神経節では、全神経細胞の11.4%、11.8%、0.5%がそれぞれTRPV1、TRPA1、TRPM8受容体を発現していたが、鼓索神経切断により各受容体発現はそれぞれ4.4%、3.9%、0%まで低下した。鼓索神経切断後の三叉神経節ではATF3、TRPV1受容体、GFAP、p-p38、p-ERKの発現変化は認められなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
臨床データに関しては当初の予定通りに検討できており、データ解析を行っている状態である。一方で動物実験においては当初期待されたMAPKkinaseの発現、発現変化が見られなかったこともあり、現在臨床データを中心として英文原著を作成中である。
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Strategy for Future Research Activity |
臨床データに関して現在解析、英文原著を作成中である。動物実験に関してはMAPKkinase以外の物質も視野に入れ、鼓索神経切断モデルでの分子生物学的発現変化を観察予定である。
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Causes of Carryover |
必要試薬、器具などを既存の物品で代用できたために差額が生じた。また当初予測された鼓索神経切断モデルにおいてMAPKkinaseの発現、発現変化が起こらなかったため試薬等購入の必要がなくなったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
動物実験に関してはMAPKkinase以外の物質も視野に入れ、鼓索神経切断モデルでの分子生物学的発現変化を観察予定である。
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