2015 Fiscal Year Research-status Report
内耳有毛細胞の不動毛極性決定におけるスカフォールド蛋白質の機能解明
Project/Area Number |
15K20239
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Research Institution | Tokyo Metropolitan Institute of Medical Science |
Principal Investigator |
安田 俊平 公益財団法人東京都医学総合研究所, ゲノム医科学研究分野, 主任研究員 (50534012)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 遺伝学 / 遺伝性難聴 / 極性異常 |
Outline of Annual Research Achievements |
SansおよびWhirlin (Whrn) 遺伝子はUsher症候群の発症責任遺伝子であり、蛋白質相互作用の仲介役として内耳有毛細胞の不動毛(stereocilia)形成に機能する。また、両遺伝子のダブルミュータントマウスでは新たな表現型として、不動毛の配向・極性異常を示す。本研究ではSansおよびWhrnの感覚毛における極性決定における機能を解明するため以下の項目において実験を実施した。 1.Sans, Whrnダブルミュータントマウスの表現型解析:本研究においては、第1に野生型、Sans、Whrn、およびSans, Whrnダブルミュータントマウスの不動毛配向・極性異常の原因となることが予想されている動毛(kinocilia)の形成異常を詳細に調査した。4系統それぞれ350以上の有毛細胞において動毛の形成位置を調査した結果、野生型の形成位置は内有毛細胞(IHC)および外有毛細胞(OHC)においてそれぞれ有毛細胞の平面中心部から平均9.9°および6.6°であった。また、その位置はSansおよびWhrnのシングルミュータントの有毛細胞においてもほぼ同様であり、統計学的に有意な差は認められなかった。一方、Sans, Whrnダブルミュータントにおける動毛の形成位置はIHCおよびOHCにおいてそれぞれ平均20.8°および30.2°であり、野生型およびシングルミュータントと比べ大きなズレが観察された。次にそれら4系統の有毛細胞の電子顕微鏡による観察を実施し、動毛の形態を調査した。その結果、ダブルミュータントにおいて野生型と比較し動毛の形成位置の大きなズレは再確認できたが、形態においてその差異は認められなかった。 2.野生型およびミュータントマウス間のディファレンス遺伝子発現解析:本研究ではSans, Whrnダブルミュータントマウスにおける発現変動遺伝子を同定するため、4系統間のマイクロアレイ解析による遺伝子発現・比較解析を計画し、現在、解析のための内耳蝸牛からのRNA抽出を4系統において継続して実施している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度実施した実験において、目標の一つであった有毛細胞上の動毛の表現型解析については、ほぼ計画通り進行したが、特にSans, Whrnダブルミュータントマウスのサンプルが思うように得られず、不動毛の極性決定分子マーカーの解析には至らなかった。また、遺伝子発現解析においても同様の理由から実験遂行のための充分量のRNAサンプルが得られず、解析を実施できなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度実施できなかった遺伝子発現・比較解析は、本研究の要であり、マウスの交配ペアを可能な限り増やし、RNAサンプルの準備および早急な発現解析の実施のために努める。その結果に基づき、同定したSans, Whrnダブルミュータントマウス特異的発現変動遺伝子のゲノム編集による変異マウスの作製・解析、およびSans, Whrnとの相互作用解析など、交付申請書に示した研究計画通りに研究を進める。
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Causes of Carryover |
遺伝子発現解析のための充分量のRNAサンプルが得られず、RNA-seq解析を実施できなかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
RNA-seq解析依頼費、遺伝子およびタンパク発現解析のための試薬類および消耗品の購入費、ゲノム編集による変異マウス作成手数料および飼育費、論文作成時の英文校閲と投稿料、および学会参加費に使用する。
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