2015 Fiscal Year Research-status Report
マイクログリアの新規接着因子Ninjurin1を標的とした糖尿病網膜症の病態解明
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15K20243
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Research Institution | Asahikawa Medical College |
Principal Investigator |
下内 昭人 旭川医科大学, 大学病院, 医員 (60647692)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | Ninjurin1 / マイクログリア / 血管新生 / Cre-LoxP |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、接着因子であるNinjurin1に着目し、マイクログリアと血管新生の相互作用におけるマイクログリア特異的Ninjurin1の役割を解明し、新規治療薬開発に向けた基盤構築を目的とする。 平成27年度は、活性化マイクログリアにおけるNinjurin1の発現と正常血管新生におけるNinjurin1の発現の確認、およびマイクログリア特異的Ninjurin1ノックアウトマウス作製の準備を行った。 具体的には、培養マイクログリアBV-2細胞株を用いて、正常環境下およびLPSにより活性化を惹起した場合でのNinjurin1の発現をRT-PCRで定量した。その結果、正常環境下でのマイクログリアにおけるNinjurin1の発現と比較して、LPS刺激により活性化したマイクログリアではNinjurin1の発現が増加する傾向を認めた。 次に生後5日目、7日目、12日目の仔マウスの網膜を用いて、正常網膜血管新生におけるNinjurin1の発現を免疫染色により検討したところ、血管及び血管周囲にNinjurin1の強い発現を認め、その周囲にはマイクログリアが遊走していることが確認された。 次に高酸素負荷虚血性網膜症モデルマウスを作製し、Ninjurin1の発現を免疫染色を用いて確認したところ、病的血管新生周囲のNinjurin1の発現は低下していた。これらの結果から、正常血管新生と病的血管新生でのNinjurin1の役割は異なる可能性が示唆された。 また、マイクログリア特異的Ninjurin1ノックアウトマウス作製のために、Cx3cr1-creマウスを購入し、現在、タイピングを行いながら、自家繁殖させている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
経過がやや遅れている理由として、実験に用いる野生型マウスやノックアウトマウス作製のために購入したCx3cr1-creマウスを飼育していた飼育室において、別の研究グループで感染症が疑われるマウスが発生し、我々のマウスが感染していないか確認できるまで飼育室に入室できなくなったことが挙げられる。また、当初は網膜から採取したマイクログリアを培養し、実験に用いる予定であったが、培養できるマイクログリアの数が少なかったため、BV-2細胞株に切り替える必要があったことも一因である。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は正常血管新生におけるNinjurin1の局在とマイクログリアとの関係について免疫染色を用いて詳細に検討する。 次に本課題に用いている高酸素負荷虚血性網膜症モデルでは、無灌流領域形成期、病的新生血管形成期、病的新生血管の退縮および無灌流領域の再生期に分かれている。今後はこれらの異なる時期におけるNinjurin1の発現と局在について検討していく。また、今後高酸素負荷装置を改良する予定であり、それにより安定したモデル作成が可能になり、実験の進捗が推進されることが予想される。 現在、研究課題の進捗を遅らせた原因は解消され、Cx3cr1-creマウスの自家繁殖も順調に行えている。今年度はNinjurin1-loxPマウスと掛け合わせることでマイクログリア特異的Ninjurin1ノックアウトマウスを作製する予定である。さらに、このマイクログリア特異的Ninjurin1ノックアウトマウスを用いて、正常血管新生におけるマイクログリア特異的Ninjurin1の役割について明らかにする。また、病的血管新生における役割について検討する予定であり、そのためには生後すぐの段階でタモキシフェンによるノックアウトの誘導を行う必要があり、より効率の良い方法について現在検討中である。
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Causes of Carryover |
国際学会などの旅費を計上していたが、平成27年度は使用しなかったことが理由として挙げられる。また、実験に必要な抗体などの試薬の中には、講座で所有している物もあり、それを利用することで経費削減に繋がった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は遺伝子改変マウスの繁殖や高酸素負荷虚血性網膜症モデル作成を推進していくため、それに伴う試薬やマウスの購入費などが必要になる。その経費に活用する予定である。
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