2017 Fiscal Year Research-status Report
着色眼内レンズがサーカディアンリズムに及ぼす影響に関する無作為化比較試験
Project/Area Number |
15K20276
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Research Institution | Nara Medical University |
Principal Investigator |
西 智 奈良県立医科大学, 医学部, 学内講師 (70571214)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 白内障手術 / 睡眠 / 眼内レンズ |
Outline of Annual Research Achievements |
外部環境と生体リズムの不一致は、睡眠障害・うつ病・糖尿病・脂質異常症・心血管疾患・がんのリスクを上昇させる。網膜の光受容細胞を介する光情報は生体リズムを外部環境に同調させる最も重要なシグナルで、短波長光の作用が最も強い。白内障手術は、網膜に届く光情報を増加させ、外部環境と生体リズムの不一致を減少させる可能性がある。また眼内レンズの波長特性によって、効果が異なる可能性がある。本研究は無作為化比較試験によって、白内障手術が生体リズム指標に及ぼす影響を検討することである。奈良県立医科大学付属病院を受診した白内障患者2309名の適格基準を検討した結果577名が該当し、参加に同意した対象者のうち、データが欠損のない169名の結果を以下に示す。術後3か月時点結果から白内障手術を受けた介入群(85名)では、コントロール群(84名)と比べて尿中メラトニン分泌代謝産物濃度が有意に高かった(P = 0.003)。非着色眼内レンズを使用した白内障手術群では、コントロール群と比べて尿中メラトニン分泌代謝産物濃度が有意に高かったのに対し、着色眼内レンズを用いた白内障群もコントロール群に比べて高いものの、有意な差を認めなかった。コントロール群は3か月の待機後に白内障手術が施行され、手術に用いた眼内レンズの種類は無作為に割り付けられた。全参加者のうち、着色眼内レンズ群(86名)と非着色眼内レンズ群(83名)の術後1年の時点の比較では、うつ症状を呈する対象者の割合、睡眠効率低値の割合、空腹時血糖高値の割合、高LDLコレステロール血症の割合に有意な差を認めなかった。当初の予定よる少ない対象者の分析となったが、今後対象者を増やして研究を進めたいと考えている。白内障手術がメラトニン分泌量に及ぼす影響に関する無作為化比較試験の結果は新規性が高く、白内障手術の全身の健康影響を示す重要な結果である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では奈良県立医科大学付属病院を受診した白内障患者2309名に対して適格基準を検討したが、結果として当初予定していた対象者数より若干少なかった。
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Strategy for Future Research Activity |
分析結果で有意な関連を認めなかった項目については、サンプルサイズが不足していた可能性が否定できず、今後さらに研究を継続し対象者を増やして検討を行うとともに、術後のフォローを継続する予定である。一方、当初予定していなかった手術群とコントロール群の比較分析を行うことができ、先行研究より妥当性の高い方法によって白内障手術のメラトニン分泌への影響を明らかにすることができた。
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Causes of Carryover |
次年度も研究を継続予定であり、研究補助の人件費などが必要なため。
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Research Products
(8 results)