2015 Fiscal Year Research-status Report
重症アレルギー眼疾患の結膜線維芽細胞におけるペリオスチンの恒常的な発現機構の解明
Project/Area Number |
15K20296
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Research Institution | National Center for Child Health and Development |
Principal Investigator |
岡田 直子 国立研究開発法人国立成育医療研究センター, その他部局等, 研究員 (50636165)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | エピジェネティクス / ペリオスチン / 慢性炎症 |
Outline of Annual Research Achievements |
重傷アレルギー性眼疾患は結膜の強い炎症や線維化を主体とした慢性炎症疾患であるが、難治化に至る過程は不明である。本研究では、重症アレルギー性眼疾患患者の線維芽細胞において、無刺激の状態においても高発現するペリオスチンに着目し、その発現過程においてエピジェネティック変化が関与することを明らかにし、さらにペリオスチンの新たな発現制御メカニズムを解明することを目的とする。 当該年度の研究では、まず申請書項目1に基づき、正常および重症アレルギー性結膜炎患者由来の線維芽細胞におけるペリオスチン遺伝子のプロモーター領域のヒストン修飾状態を比較検討した。重症アレルギー性角結膜炎患者と正常ドナー由来の結膜線維芽細胞をそれぞれ同一条件で培養後、いくつかの抗ヒストン修飾抗体を用いてChIP assay法で調べた。結果、正常由来線維芽細胞に比べ、重症アレルギー性角結膜炎患者線維芽細胞において、ペリオスチンのプロモーター領域におけるH3K9me3(遺伝子発現抑制マーカー)が減少傾向を示すことがわかった。一方で、H3K4me3(遺伝子発現促進マーカー)は変動がなかった。 次に申請書項目2に基づき、正常結膜線維芽細胞について、ペリオスチンのエピジェネティクスな発現誘導を引き起こす候補因子を解析した。まずはペリオスチンの発現誘導をおこすことが既知であるIL-13およびTGF-βについて、刺激正常ドナー由来の結膜線維芽細胞へ長期間(~7日間)刺激を行い、その後wash outを行い、さらに細胞培養を続けた後のペリオスチンの遺伝子発現をqPCRで確認した。その結果、IL-13は刺激がある状態ではペリオスチンを発現誘導するが、wash out後には徐々に発現が低下し、無刺激の細胞とほぼ同じレベルになるのに対し、TGF-βはwash out後にもペリオスチンの遺伝子発現を維持しうることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の目的通り、同一環境で継代培養された重症アレルギー性角結膜炎患者と正常ドナーの結膜線維芽細胞において、ペリオスチン遺伝子のプロモーター領域におけるヒストン修飾状態が変化していることを同定できた。このことは、線維芽細胞が生体内の炎症環境で受けたサイトカインなどの影響によってエピジェネティック変化をおこし、単離培養後にもしばらく継続して残ることを示している。さらに、正常ドナーの結膜線維芽細胞を用いた検討において、TGF-βがペリオスチン遺伝子のエピジェネティックな発現誘導に関与している可能性を発見した。引き続き、この成果をもとに、TGF-βの下流シグナルによるエピジェネティクス誘導メカニズムを検討し、重症アレルギー性角結膜炎患者由来線維芽細胞で観察されたエピジェネティック変化との共通性を調べる予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度に得られた結果を基にして、引き続きペリオスチン遺伝子のエピジェネティクス制御因子を同定する。具体的には、ペリオスチン遺伝子の発現誘導、および発現維持が確認されたTGF-βについて、重症アレルギー性眼疾患患者由来結膜線維芽細胞と同様のエピジェネティックな変換が誘導可能かどうか、ヒストンの化学修飾状態を調べる。また正常結膜線維芽細胞において、TGF-βによるエピジェネティック変換が誘導される際の薬剤感受性(FK506、ステロイドおよびヒストン脱アセチル化酵素阻害剤などを予定)を検討する。 さらに、病態形成に関与するエピジェネティック変換のメカニズムを検証するため、申請書項目3に基づき、このエピジェネティック誘導における下流のシグナル伝達経路について詳細に検討を行う。正常結膜線維芽細胞においてエピジェネティック変換が誘導されるタイミングにおいて、マイクロアレイを用いた網羅的な遺伝子発現変動を解析する。ここで得られたいくつかの誘導候補因子に関しては、siRNA導入実験を実施し、ペリオスチン遺伝子発現への影響をqPCR、ELISAで調べる。また、既知の下流シグナル経路(Smad2/3, STAT3活性化)の関与についても、ウェスタンブロット法を用いて確認する。
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Causes of Carryover |
購入を予定していたいくつかの抗体および汎用試薬について、実験系における使用量の節減が効率よくできたため、購入の必要がなくなった。これらは、次年度に予定しているsiRNA関連試薬の購入費用の補てん分としたい。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
免疫染色、Western blottingおよびクロマチン免疫沈降用抗体、qPCR、ELISA、クロマチン免疫沈降などに用いる抗体以外の試薬(プライマーセット、アッセイキット、磁気ビーズ、専用バッファーなど)の購入、siRNA導入実験関連試薬、各種プライマリー培養線維芽細胞の維持管理に必要な試薬、消耗品(培養液、抗生剤、Trypsin-EDTAなどの継代試薬、各種プラスチックウェア、ピペット、チップなど)の購入、各種学会への参加費(国内、海外)などを予定している。
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[Journal Article] The usefulness of measuring tear periostin for the diagnosis and management of ocular allergic diseases.2016
Author(s)
Fujishima H, Okada N, Matsumoto K, Fukagawa K, Igarashi A, Matsuda A, Ono J, Ohta S, Mukai H, Yoshikawa M, Izuhara K.
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Journal Title
J Allergy Clin Immunol.
Volume: 印刷中
Pages: 印刷中
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Sera of patients with infantile eosinophilic gastroenteritis showed a specific increase in both thymic stromal lymphopoietin and IL-33 levels.2016
Author(s)
Shoda T, Matsuda A, Arai K, Shimizu H, Morita H, Orihara K, Okada N, Narita M, Ohya Y, Saito H, Matsumoto K, Nomura I.
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Journal Title
J Allergy Clin Immunol.
Volume: 印刷中
Pages: 印刷中
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Platelets constitutively express IL-33 protein and modulate eosinophilic airway inflammation.2016
Author(s)
Takeda T, Unno H, Morita H, Futamura K, Emi-Sugie M, Arae K, Shoda T, Okada N, Igarashi A, Inoue E, Kitazawa H, Nakae S, Saito H, Matsumoto K, Matsuda A.
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Journal Title
J Allergy Clin Immunol.
Volume: 印刷中
Pages: 印刷中
DOI
Peer Reviewed
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