2015 Fiscal Year Research-status Report
再発・進行神経芽腫の予後改善を目指したプロテオミクスによる新規マーカーの検討
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15K20299
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
大竹 耕平 三重大学, 医学部, 助教 (40378344)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 神経芽腫 / マーカー / 予後因子 / プロテオミクス / DDX39A |
Outline of Annual Research Achievements |
予後不良な神経芽腫のマーカーを選出するため、神経芽腫細胞株を用い、分化誘導薬であるall-trans-retinoic acid(ATRA)により神経芽腫の細胞を分化させることで、その悪性度を下げ、ATRA で治療していない(分化していない悪性度の高い)細胞とタンパク質の発現を比較した。IMR-32、LA-N-1の2つの神経芽腫細胞株を用い、10microM ATRAによる分化誘導を行い、分化を確認し、ATRA で治療した(分化した)細胞、ATRA で治療していない(分化していない)細胞からタンパク質を抽出した。トリプシンとendoproteinase Lys-C を用いて消化を行い、ペプチド複合体とし、label-free shotgun proteomics によりペプチドの解析とタンパク質の同定を行った。合計713種類のタンパク質が検出され、12種類のタンパク質が分化していない悪性度の高い神経芽腫の細胞のみに発現していた。このうち、タンパク質の発現部位や機能をタンパク質のデータベース(Uniprot:http://www.uniprot.org/)で確認し、ATP-dependent RNA helicase(DDX39A)に着目し検証を行った。Multiple reaction monitoring (MRM)でDDX39A由来のペプチドは未分化な細胞で有意に高値であった。Western blot法でDDX39Aの発現は未分化な細胞で有意に高値であった。さらに免疫組織学的染色により、未分化な神経芽腫の臨床検体でDDX39Aの発現は陽性であることが確認された。神経芽腫の予後との検討では、単変量解析、多変量解析で、神経芽腫の予後因子の一つであるMYCN増幅と共に有意に予後と相関を認め、DDX39Aの高発現群でoverall survivalが不良であることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予備実験を26年度から始めていたため、現在までの進捗状況はおおむね順調に進行している。神経芽腫の新規予後不良マーカーとなる可能性を持つATP-dependent RNA helicase(DDX39A)の選出に成功し、臨床検体を用いて、検証を行うことができた。これらは当初の計画通りに進行しており、28年度も引き続き、研究を行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
神経芽腫の現在の統一された治療プロトコールでは、治療前の腫瘍生検による病理所見などの生物学的な予後因子と発症時の年齢、局所浸潤や遠隔転移の有無などの臨床的な因子を組み合わせ、リスク分類を行い、最適な化学療法を選択し、高リスク症例であれば、骨髄移植を伴う大量化学療法後に手術による局所切除と放射線治療を行う。そこで、一旦、治療は終了となるが、その後の再発、進行症例は40.6%に認められ、10 年のoverall survival は再発症例6.8%、進行症例14.4%と予後は極めて不良である。また、リスクの低いStage1やStage2 の症例の中にも、局所再発などの再発、進行症例は7%、16.8%と存在し、これらに有効な維持治療、追加治療を行うことも重要であると考えられる。再発、進行神経芽腫症例の追加治療としては、vinblastine とsirolimus の併用療法、抗GD2 抗体などの免疫療法、ALK インヒビターであるcrizotinib、131I-MIBG とirinotecan の併用療法、low-dose irinotecan などがあげられ、予後不良群を同定するための新規マーカーが存在すれば、追加治療の必要な症例を選出し、より良い治療を行うことができると考えられる。そのため、我々は、ATP-dependent RNA helicase(DDX39A)について、神経芽腫の化学療法後の根治的外科切除の標本を用い、免疫染色を行う予定である。根治的外科切除の標本免疫染色の結果と予後、再発についての検討を行い、治療終了後の追加治療の是非を決めるマーカーとしての可能性を評価する。
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Causes of Carryover |
免疫染色に関する実験の一部を平成27年度に行ったため、消耗品等の購入費が予定よりも高額となったが、予備実験を平成26年度に終了できたため、Mass spectrometerの使用費を抑えることができた。Mass spectrometerの使用費を抑えることができたため、他の経費が予定を上回っても、次年度使用額が299,209円となりました。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額は引き続き免疫染色を行うための消耗品等の購入費、論文投稿料、成果発表に使用する予定である。
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Research Products
(3 results)