2015 Fiscal Year Research-status Report
神経芽腫における血管新生系を標的としたPIポリアミドによる抗腫瘍効果の検討
Project/Area Number |
15K20302
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
植草 省太 日本大学, 医学部, 専修医 (70746338)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 神経芽腫 / NRP1 / MMP9 |
Outline of Annual Research Achievements |
Neropilin1(NRP1)は、細胞膜に存在する1回膜貫通型受容体であり、リガンドのSemaphorin3Aと結合し、神経系細胞では、神経軸索の伸長を抑制する。神経堤細胞を起源とし、交感神経節および副腎髄質に多く発生する神経芽腫では、NRP1の発現と病期には負の相関があり、NRP1の低発現で予後が不良であることが報告されているが、その機能は明らかでない。今回、NRP1のpromoter領域に位置し、NRP1の発現を制御するSp1結合領域を標的としたPyrrole-Imidazole Polyamide(PIP)を作製し、NRP1抑制による神経芽腫細胞の特性の変化をin vitroで検証する実験を企画した。ヒト神経芽腫細胞株でNRP1高発現のSK-N-ASを用い、PIPによるNRP1抑制の実験を行うため、濃度、時間を変えてPIPを投与したが、有意なNRP1の抑制効果が得られなかった。そこでsiRNAを用いて、NRP1の発現を抑制し、腫瘍細胞の増殖・遊走・浸潤能の変化についてWST-8 assay、Wound healing assay、Matrigel invasion assayで解析した。ヒト神経芽腫細胞株では、NRP1発現抑制の結果、細胞増殖能に有意な変化はなく、細胞の浸潤・遊走能が有意に増加した。この結果から神経芽腫においてNRP1は腫瘍に対する治療標的として望ましくないことが示唆された。今後、NRP1の発現抑制により腫瘍細胞の浸潤・遊走能が亢進する要因を詳しく解析するとともに、神経芽腫に対するPIPによるMMP9を標的とした腫瘍抑制効果についても検討する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでに、NRP1のpromoter領域に位置し、NRP1の発現を制御するSp1結合領域を標的としたPyrrole-Imidazole Polyamide(PIP)を作製し、NRP1抑制による神経芽腫細胞の特性の変化をin vitroで検証する実験を行った。ヒト神経芽腫細胞株でNRP1高発現のSK-N-ASを用い、PIPによるNRP1抑制の実験を行うため、濃度、時間を変えてPIPを投与したが、有意なNRP1の抑制効果が得られなかった。NRP1に対するsiRNAを購入し、SK-N-ASへ投与後48時間後にReal time PCRとWestern blottingでNRP1の発現を解析し、NRP1の発現が抑制されていることを確認した。siRNAを用い、NRP1発現抑制による腫瘍細胞の増殖・遊走・浸潤能の変化についてWST-8 assay、Wound healing assay、Matrigel invasion assayで解析した結果、細胞増殖能に有意な変化はなく、細胞の浸潤・遊走能が有意に増加した。この結果から神経芽腫においてNRP1は腫瘍に対する治療標的として望ましくないことが示唆された。またこの結果からNRP1発現抑制による腫瘍細胞の浸潤、転移に関わるメカニズムを解析する。 神経芽腫におけるMMP9の機能を解析するため、ヒト神経芽腫におけるMMP9のRNAレベルの発現状態をReal-time RT PCRで調べた結果、MMP9の高発現と低発現に層別化された。MMP9高発現株は、NB69、SK-N-SH、SK-N-AS、SH-SY5Yであり、低発現はNB1、NB9、Kellyであった。今後この結果をもとにPIPによるMMP9を標的とした腫瘍抑制効果について解析する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
ヒト神経芽腫細胞株SK-N-ASにおいて、siRNAでNRP1の発現を抑制した結果、腫瘍細胞の遊走・浸潤能が亢進した。この分子機構を解明するため、NRP1の発現抑制による接着因子(Integrinβ1、Vimentin、N-Cadherin、β-Catenin)の蛋白発現をWestern-blottingで解析する。さらに下流経路のリン酸化状態についてもWestern-blottingで解析し、NRP1発現抑制による細胞の遊走・浸潤能亢進の要因を明らかにする。 MMP9高発現のヒト神経芽腫細胞株NB69、SK-N-SH、SK-N-AS、SH-SY5Yを用いて、MMP9を標的としたPIPによるMMP9発現抑制を行う。PIPの至適濃度、至適反応時間についてPIPを500nM、1μM、5μM、10μM、20μMに分け、細胞にPIPを投与した後、24、48、72時間後に細胞を回収する。RNA、蛋白ををそれぞれ抽出し、Real-time RT-PCRおよびWestern blottingで発現抑制効果を検討する。 PIPの至適濃度、至適投与時間を決定した後、MMP9発現抑制の影響を細胞増殖能、遊走能、浸潤能についてそれぞれ、WST-8assay、Wound healing assay、invasion assayで解析する。 MMP9低発現のNB1、NB9、Kellyに対しては、MMPのfull lengthのcDNAを導入し、定常発現株を作製する。発現抑制の実験と同様に、MMP9過剰発現による細胞増殖能、遊走能、浸潤能の影響について解析し、神経芽腫におけるMMP9の機能を明らかにするとともに、MMP9が神経芽腫における治療標的となり得るかを検討する。
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Research Products
(2 results)