2015 Fiscal Year Research-status Report
低酸素による脂肪幹細胞の活性化メカニズムの解明と皮弁虚血再生治療への応用
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15K20329
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Research Institution | Kansai Medical University |
Principal Investigator |
尾川 武史 関西医科大学, 医学部, 研究員 (80739269)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 脂肪幹細胞 / 低酸素 / HIF / 血管新生 / 皮弁虚血 / 再生医学 |
Outline of Annual Research Achievements |
脂肪幹細胞は、手術の余剰組織から得られたヒト脂肪組織を洗浄、コラゲナーゼ処理、遠心分離することによって分離した。得られた脂肪幹細胞は、脂肪細胞分化培地で培養することで脂肪細胞への分化能を有することが確認された。 脂肪幹細胞を酸素濃度1%(低酸素)または20%(通常酸素)のインキュベーターで24時間培養した後、各細胞群からRNAを抽出し、培養上清を採取した。これらのRNAを用いたRT-PCR法による発現遺伝子の解析の結果から、低酸素によりVEGF(血管内皮増殖因子)およびFGF(繊維芽細胞成長因子)-2の遺伝子の発現が増加しており、ELISA法による培養上清中の成分分析でも、低酸素によりVEGFおよびFGF-2の増加が認められた。 また、IdU取り込みアッセイにより低酸素下で細胞増殖が促進することを示した。さらに、Akt阻害剤、ERK阻害剤、p38阻害剤を培地に添加して培養すると、Akt阻害剤およびERK阻害剤添加群で細胞増殖が抑制された。また、低酸素下での培養で発現が認められたHIF(低酸素誘導因子)-1aのタンパクの発現もAkt阻害剤およびERK阻害剤の添加により抑制された。以上の結果から、低酸素による細胞増殖の促進には、HIF-1aの経路が関与し、その中でもAktおよびERKが大きく影響していることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画書に記載した平成27年度実施予定の実験に関しては、おおむね予定通りに実施され、データが得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
ChIPアッセイにより低酸素下における血管新生因子の発現・産生とHIF-1aの関連を探索する。 また、HIF-1aのsiRNAを用いて、低酸素下の機能発現がHIF-1aを介した作用であるかどうかを検証する。 さらに、マウス背部に矩形皮弁を作成し、その基部、中央部、先端部に脂肪幹細胞、生理食塩水(Control)、脂肪幹細胞+ゼラチンハイドロゲルを注入投与し、皮弁生着面積の経時的な測定および皮弁組織のサンプリングを行う。この際に、脂肪幹細胞にはDilまたはPKHでラベリングしておき、幹細胞生着の局在を探索できるようにしておく。採取した組織は、HE染色、vWF、CD31免疫染色にて新生血管密度を検討し、ラベリングに対する蛍光顕微鏡による観察で幹細胞の局在を確認する。ウェスタンブロッティングにてHIF-1aの発現を検討し、RT-PCRにて血管新生関連因子の発現を経時敵に検討する。各群における皮弁生着部位と皮弁壊死部位の酸素分圧を生物組織内酸素分圧測定装置を用いて経時的に測定し、皮弁の血流の状態をレーザードップラー血流画像化装置でモニタリングする。同様の実験を白色家兎についても行い、前臨床基盤データを蓄積する。
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Causes of Carryover |
学会参加等のために計画していた旅費が、予定したほど必要なかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度にはマウスを使用した実験が多くなるため、マウス13匹の購入に充てる。
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