2015 Fiscal Year Research-status Report
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15K20330
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
秋田 新介 千葉大学, 医学部附属病院, 助教 (00436403)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | リンパ浮腫モデル / リンパ節移植 / 新生リンパ管 |
Outline of Annual Research Achievements |
ストローマ細胞+コラーゲン複合体よりなる人工リンパ節に輸入リンパ管様組織を誘導、導入するべく、従来法と同様、マウス腎被膜下を使用して作成するマウス人工リンパ節作成時に、脂肪由来幹細胞の移植と併用し、細胞由来のサイトカインによるリンパ管の誘導能を期待したが、リンパ節様の濾胞を形成する組織の形成は見られたものの、Podoplanine染色で確認できる明確なリンパ管の増生は認められなかった。 人工リンパ節内への機能的リンパ管の誘導を促進するには、リンパ管組織の再生が最も盛んとなる環境が最適であると判断し、皮下リンパ管が障害された環境下での人工リンパ節の作成と、リンパ管の新生の誘導への取り組みを開始した。まず、マウスリンパ浮腫モデルの作成を開始した。Ogata et al.の腹部リンパ浮腫モデルの作成方法を用いて、腹部マウスリンパ浮腫モデルを確立した。マウス鼠径リンパ節にインドシアニングリーンを直接注射して腹部皮下リンパ管を同定し、腹壁リンパ管の結紮、腋窩リンパ節の切除を行って腹部リンパ浮腫モデルを作成した。Shamでリンパ浮腫様変化がみられないこと、Controlリンパのうっ滞と組織肥厚が発生することを確認した。同時に、本モデルでは長期的にリンパ浮腫は改善傾向となり、controlにおいて5-7日目に最も大きな変化が観察されることが確認された。 自家リンパ組織移植では血管吻合を用いないgraftとして腋窩リンパ節を腹壁に移植した場合に、移植組織が生着することと、移植リンパ節への新生リンパ管の侵入が得られることを確認した。また、腹壁のリンパ浮腫用変化がcontrolと比較して少ないことも確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
人工リンパ節はリンパ浮腫様の構造をもつものの、リンパ球の通路は明確ではない。人工作成組織において太さを有するリンパ管を発生させるには、脂肪由来幹細胞や、サイトカイン、ケモカインの組み合わせなどの組み合わせや移植量など、当初腎被膜下で以下にリンパ管を発生させるかに取り組んでいた。しかし、生体内におけるリンパ管新生の発生の場は、消化管周囲や皮下などの、異物からのバリア機構の周囲において盛んであり、リンパ管の新生は障害された集合リンパ管の末端で最も盛んであることを考え、人工リンパ節の構築の場を皮下に変更することにした。 次には、マウスを含めリンパ浮腫モデルには諸家の報告があり、安定した結果、扱いやすさ、生着が良好な環境、効果の違いの観察のしやすさなどから文献的に、あるいは研究者のネットワークを通して本研究に適したリンパ浮腫モデルについて模索した。 マウス腹壁リンパ浮腫モデルを作成し、この検証に時間を要した。すなわち、shamとの違い、モデル作成後の自然経過の観察、適切な評価時期などの検討を要した。 自家組織移植においても鼠径リンパ節、腋窩リンパ節、大網のリンパ節などにおいて作用に差がある可能性があり検討を要した。 これらの検討により、評価時期や項目、比較対象についての用意は進んだものの、今回開発のターゲットである人工リンパ節の実験については、今後データをとっていく段階であり、全体としてはやや遅れている。リンパ管の新生が十分えられ、浮腫の軽減効果が強い寳保の模索に今後時間を費やすこととなる見込みである。
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Strategy for Future Research Activity |
リンパ浮腫モデルマウスを用いて、Sham,Control, 腋窩リンパ節移植、人工リンパ節におけるリンパ管の新生効果と浮腫軽減効果について比較する予定である。特に、人工リンパ節に脂肪由来の幹細胞や、リンパ節由来の細胞を併用することによって、リンパ管新生効果に差が生じる可能性があり、よりリンパの流れを改善する方法について考察を加えていきたい。 一方、マウスでは自家腋窩リンパ節移植を行うにあたって血管吻合を用いた移植が困難であり、non-vascularizedなgraftである。このことが移植組織の生着、というレベルではなく、リンパ浮腫改善効果に影響をもたらす可能性がある。我々は解剖学的な構造の近いラットにおいてもマウスと同様な手術操作が腹壁において可能なことはすでに確認している。 ラットの腹壁リンパ浮腫のモデルの自然史については未だ十分に確立していないが、マウスと同様の操作で確立できるかどうかを今後確認する。確立後に、マウスでは困難であった血管柄付きの自家リンパ浮腫組織移植と人工リンパ節の違いを観察できるのは実臨床へつながりうる基礎研究という意味て大きな意義がある。また、ラットはマウスと比べ組織に厚みがあり、病理検査やインドシアニングリーン蛍光造影のみでなく、volume比較や高精度の超音波機械による観察所見といったリンパ浮腫評価方法においても応用が広く利点は多い。ラットにおけるモデルの確立と人工リンパ節移植によるリンパ浮腫改善効果の評価を行っていきたい。
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Causes of Carryover |
病理標本作成を当初外注としていたが、研究組織内での作成が可能となったため、経費が一部節約可能となった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
病理標本作成時にpodoplanine染色を免疫染色に用いていたが、その他の試薬も追加し、最も適切な評価方法を検討するのに充てる予定としている。 また、マウスでの研究のみの予定から、ラットでも研究を行う予定となったため、消耗品の購入に充てる。
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