2015 Fiscal Year Research-status Report
ブロムワレリル尿素の全身性免疫反応症候群に対する治療効果のメカニズム解明
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15K20343
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
桑原 淳 愛媛大学, 医学部附属病院, 助教 (00512162)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | シグナル伝達 / 敗血症 |
Outline of Annual Research Achievements |
我々は睡眠鎮静剤であるブロムワレリル尿素(BU)がlipopolysaccharide(LPS)で刺激したラットマクロファージのシグナル伝達においてJanus kinase 1(JAK1)/Signal transducer and activator1(STAT1)シグナル伝達阻害効果を持つことを発見した。BUがLPS刺激されたマクロファージの炎症性サイトカインの産生抑制効果を持つことから敗血症の新規治療薬としての可能性を考え盲腸結紮穿刺(CLP)ラット敗血症モデルで7日間の生存率を検討した。BU非投与群での死亡率が85%であったのに対しBU投与群では50%と有意に死亡率を改善させた。またCLP施術後24時間で血液検査を行い臓器損傷の程度や炎症性サイトカインの産生を検討した。BU投与群で有意に血清IL-6の産生を抑制し、腎機能の指標となるクレアチニンの上昇を抑制し、血液ガス検査で酸素化能を改善した。BUの作用機序の検索としてラット腹腔マクロファージと肺胞マクロファージにLPSとinterferon-γ(INFγ)を刺激物質として用いシグナル伝達を検討した。BUはLPS刺激で起こるinhibitor of Nuclear factor-kB(IkB) の減少を抑制しなかった。(Satoshi Kikuchi The ameliorative effects of hypnotic bromvalerylurea in sepsis. Biochemical and Biophysical Research Communications 459:319-326, 2015)
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
LPSによって導かれる炎症シグナルは2段階に分けて引き起こされていると考えられる。最初のステップはNF-kbの核内移行である。2段階目はJAK1-STAT1の活性化によって起こると考えられる。これらの一連の流れはどの段階でも治療の標的となりうると思われるが、これまでの研究でToll Like Receptor4の阻害薬であるエリトランは臨床試験で治療効果が得られなかった。一方でIFNγ欠損マウスやSTAT1欠損マウスでは敗血症に対し抵抗力を持つことが報告されている。我々の研究結果も2段階目の阻害が敗血症の治療に有益である結果を示唆している。以上よりJAK1/STAT1の活性化の阻害は敗血症治療のターゲットと思われ、ブロモワレリル尿素が敗血症の新規治療薬の候補となりうると思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
腹膜炎に伴う敗血症は、腸管からのバクテエリアルトランスロケーションによって引き起こされる。敗血症に続き引き起こされるのがALIおよびARDSである。IL-6はIL-1bやTNF-aの様々な刺激により肺胞マクロファージで産生される。IL-6はその血清中やBALF中の濃度が、患者の予後と比例するといった報告は非常に多く、ICUにおいて血清中IL-6が測定されることが多い。ALI/ARDSに関わる炎症性メディエーターは、数え上げればきりがないが、最近ではIL-8やHMGB1またその受容体であるRAGEが敗血症の病態において重要な役割を果たしていることが明らかとなり、研究者たちの注目を集めると同時に、新たな治療薬創薬のターゲットとなる可能性を示している。我々は、腹膜炎からALI/ARDSへの一連の流れにおいて、肺胞マクロファージの役割の大きさに注目し研究を行っている。肺胞マクロファージは好機的条件下に存在する唯一のマクロファージであり、極めて高い貪食能を有すると同時に、様々なサイトカインやNOを産生することにより、ALI/ARDS発症に大きく関わっていることが明らかとなっている。これらのデータより、肺胞マクロファージの機能を制御し、炎症性メディエーターやケモカインの産生および放出を抑制することは、肺の炎症を軽減することへとつながる可能性を持っている。 また、現在はDSSを内服させた腸炎モデルのラットに対してBUの有効性も検討中である。
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Research Products
(2 results)