2016 Fiscal Year Research-status Report
自然免疫受容体発現のパターン解析による発熱の新規鑑別法の開発
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15K20346
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
田島 吾郎 長崎大学, 病院(医学系), 助教 (00437427)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 自然免疫受容体 / 発熱 / 全身性炎症 / 感染症 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は病原体センサーである自然免疫受容体(pattern recognition receptors:PRRs)の発現パターンに基づいた発熱の新規鑑別法(原因別分類)を開発することで、以下3点に従って研究を進めている。【1】マウス各種炎症モデルにおける血中のPRRsの遺伝子、蛋白発現を経時的な変化を測定する。【2】原因疾患別にPRRsの発現をレーダーチャート表示し発現パターンを明らかにする。【3】集中治療中の発熱患者において末梢血中のPRRsの遺伝子、蛋白発現を測定し、パターン分類、解析を行う。 平成28年度は、前年度の結果を第75回アメリカ外傷外科学会でポスター発表した。今年度はさらに、動物実験においてSham、敗血症モデル(CLP)、熱傷モデル(Burn)の3群で、侵襲後の自然免疫受容体の経時的な遺伝子発現を測定した(6,12,24時間)。全血からtotal RNAを抽出し、定量RT-PCRにより自然免疫受容体(TLR2, TLR4, TLR9, NLRP3, RIG-I)の遺伝子発現を測定した。TLR2,TLR4の発現はCLP、Burnにおいて受傷6時間後から有意に上昇した(p<0.05)。TLR9の発現はCLPにおいて12,24時間後でSham, Burnより有意に低下した(p<0.05)。NLRP3の発現はCLP、Burnにおいて6,24時間後で有意に上昇した。各受容体の遺伝子発現をレーダーチャート表示すると、受傷6時間後から各群で特徴的な発現パターンを示し、遺伝子発現パターンを比較するため判別分析を施行したところ、過誤率は3.03%(6時間後)、6.25%(12時間後)、6.06(24時間後)で3群を判別することができた。本結果は第76回アメリカ外傷外科学会での口演発表が決定している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
動物実験においては、敗血症、熱傷モデル以外のモデルでの自然免疫受容体の遺伝子発現の測定と、フローサイトメーターでの自然免疫受容体の細胞内での蛋白発現が測定が遅れていることが問題である。原因としては遺伝子組み換え動物による安定したモデル作成に至っていないことと、細胞内染色のための膜の処理、染色時間などの手技的な問題により細胞内蛋白の染色が安定していない可能性が考えられる。また、臨床検体を用いた研究では院内の倫理委員会の承認を得るまでに時間がかかったため、発熱患者の検体が十分に集まっていないことが原因である。
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Strategy for Future Research Activity |
遺伝子発現については、さらに経時的な変化を測定して、アレルギー、ウイルス感染モデルも加えて、病態に特異的なパターンを同定するとともに、各病態の判別法を確立する。また、自然免疫受容体の細胞内染色が十分に安定していないため、技術的な問題について、細胞の固定時間や、染色試薬、抗体濃度、反応時間を変えて検証する。また、発熱患者の末梢血白血球での自然免疫受容体発現を測定して、動物実験結果をもとに、その発現パターンを評価して、動物実験結果同様に病態の判別が可能か検証する。
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Causes of Carryover |
動物実験については、遺伝子組み換え動物による安定したモデル作成できていないことと、フローサイトメーターでの自然免疫受容体の細胞内での蛋白発現が測定できていないために研究が予定通りに進行せず、試薬、抗体、動物などの購入にも遅れが生じた結果、次年度使用額が生じた。また、臨床検体を用いた研究では院内の倫理委員会の承認を得るまでに時間がかかり、患者検体の収集が進まなかったため予定の研究への着手が遅れて、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度分については遺伝子組み換え動物と、FACS用に細胞染色の試薬、抗体、PCR用キット、プライマーを中心に使用する予定である。また、現在得られている結果について、国内外の学会での発表が決まっているため成果発表の費用に使用する。
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Research Products
(3 results)